豪州に何人もの命を奪った「ガチ峠」サーキットがあった! 実際に走ったレーシングドライバーが語る衝撃の中身 (2/2ページ)

峠の要素も含んだ簡単には攻略できないコース

 マウントパノラマコースはピット/パドックを備える平坦な地形部から丘陵を駆け上がり、山頂をハイスピードで駆け巡り約2kmのロングストレートを駆け下りる1周6.213kmのコース。ピット周辺は普段は公道として使用されるパートタイムサーキットだ。

 山に向かう「マウンテンストレート(約1.1km)」と駆け下りる「コンロッド・ストレート(2km弱)」のふたつの直線区間があり、とくに下りとなるコンロッド・ストレートは最高速度がツーリングカーでも300km/hを超える超高速に達する。初遠征した1986年時にはシケインがなく、コンロッド・ストレートでは最高速が記録されたが、コースサイドにガードレールがなく、芝が敷かれて広く取られたランオフエリアには立木があり、過去に6人ものドライバーが激突して命を落としている。マクラーレンF1で活躍したデニス・フルムも1992年にこのコンロッド・ストレートでアクシデントに見舞われ絶命しているのだ。

 コース全体の路面コンデションは良くなく、轍があったり舗装面にアンジュレーション(うねり)があり真っすぐ走らせるのも困難なほど。マウンテンサイドは高速でランオフエリアも狭い。コースアウトすれば壁に激突するか横転して崖から落ちるかの危険なコースで、アクセルワークが肝になるのだ。

 ブラインドコーナーが多く、先でスピンしている車両があれば回避するのも難しい。しかし、自然の地形を活かしたコーナーレイアウトは攻め甲斐もあり、リズミカルかつチャレンジングで麻薬性もある。一度足を踏み入れたら攻略できるまでアドレナリンは静まらないのだ。

 僕は1986年のスタリオン初挑戦時には予選トップ10のハーディーズヒーローに残るも、決勝はターボトラブルでリタイヤ。翌1986年は予選で23位からスタート。決勝はBMWワークスM3のJ・チェコット/G・ブランカテリ組やE・ピロ/R・ラバグリア組みと激闘を繰り広げながらも抑え込み、総合5位フィニッシュした。当時のラップタイムはスタリオンで2分28秒台。今、グランツーリスモでランエボX Gr.3で走ると2分9秒台が出る。近年ではGT3マシンが実際の予選で2分2秒台を記録。マシン性能の進歩は凄まじいのだ。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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