たかが「表皮」がカーライフをも左右! クルマの「シート地」の複雑な中身と選び方 (2/2ページ)

レザーシートのほうが高価だが布のほうがいい面もある!

 一方、レザーシートの持ち味はやはり高級感だ。コストはかかるものの、しっかりと仕上げれば、風合いはよく、しっとりとした感触が楽しめる。高級車に使われるのはこの点を活かしてのこと。ただ、色を塗って作られているので、表面が劣化してくるし、汚れが付くと落としにくいこともある。また、革自体が劣化してくることもあって、丈夫なようで長く使うにはそれなりの手入れが必要だ。表面処理によってはコーナーなどで横Gがかかったときに滑ることがあったりするので、加工や仕上げによってシート自体も左右する生地といっていい。

 さらに革でも、独特の風合いをもったものが、スウェードやバックスキンと呼ばれる裏地を加工したもの。毛羽が立てられていて、独特の風合いが楽しめるが、表面はツルツルではないので、汚れがかなりつきやすく、落としにくいというデメリットがある。そのため、シートに使われる場合は一部のみとなることが多い。

 レザーは天然素材を丁寧に加工する必要があるので、どうしても高くなってしまうが、その欠点を補うのが人工レザーと呼ばれる素材で、アルカンターラなどがお馴染みだ。人工というだけに、化学的に作られた生地となって、アルカンターラは東レが開発したものとなる。バックスキンのような触り心地のものが多く、耐久性も高く、比較的安価に抑えることができるというメリットもある。

 そしていまや絶滅してしまったのが、ビニールレザーだ。ビニールなのにレザーというのは矛盾しているが、最近までタクシーには使われていたし、トラックなどの商用車の一部ではまだ使われていて、ビニールを加工して少しだけだが、レザーのような風合いを出しているのが特徴。いま思えば安っぽいけど、1970年代では布とは違う新しい感じがしていて、1970年代あたりには乗用車でも広く使われていた。複雑なシボや柄を入れてそれなりに、高級感を出していたものだ。ただ、ビニールなので汗が染み込まず、夏はベタベタしたり、冬は座りはじめが冷たかったりしたものだ。

 このように生地ひとつ取ってみても、さまざまで、クルマのキャラクターや時代に合わせて流行り廃りがあるし、加工の仕方やカラーなども進化していくことがわかる。


近藤暁史 KONDO AKIHUMI

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レストア、鉄道模型(9mmナロー)、パンクロック観賞
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