王道のミニバン&セダンが苦戦! ユーザーが「流れた」2つのジャンルとは? (3/3ページ)

軽自動車とコンパクトカーが日本の環境に合っている!

 やはり軽自動車にはボディサイズや排気量などの規定があるため、室内が広いとは言っても4人乗りが限度。ターボエンジンなど昔よりパワフルではあるものの、フル乗車で荷物を満載にすれば厳しいシーンもあるものです。また、登録車よりも開発コストがシビアで、販売価格を抑えるために装備内容も厳選している傾向があるため、それまで使っていた装備が軽自動車では選べなかったり、高速道路などでの快適性に物足りなさを感じたり、ということもあろうかと思います。人によって「ここは妥協したくない」というポイントはさまざまなので、軽自動車では満足できない場合もあるのではないでしょうか。

 そうした場合に、5人乗りや3列シートも選べ、装備も充実しているコンパクトクラスなら条件を満たせるということで、軽自動車にダウンサイジングしきれなかった人たちの受け皿として、コンパクトカーが選ばれた可能性は大きいと思います。セダン離れやミニバン離れが進み、軽自動車とコンパクトカーが新たなニーズに応えている状況だと考えられます。

 そしてもうひとつの理由として、全体的にクルマのボディサイズが大型化していることと、クルマの価格が高騰していること、そして高齢化社会との関係性も見えてくると思います。日本の道は狭い路地が多く、駐車場の枠も昔からの場所はタイトですよね。でも、クルマは年々厳しくなる安全基準を満たすためなどで、大きくなっています。それまで乗っていたモデルの新車に乗り換えようと思ったら、サイズが大きくなってしまって自宅の駐車場に収まらなくなり、泣く泣くワンサイズ小さなモデルにした、という話も珍しくありません。また、高齢になって体力や動態視力が衰えてくると、大きなクルマの運転が不安になってくるという理由もあるでしょう。

 さらに、若年層の所得はいっこうに上がらず、子育て世代は将来への不安から出費を抑える傾向にあり、年金生活に入る高齢者も増えていくなか、価格が高騰している新車を買うのはなかなか大変。予算内に収めようとすると、コンパクトカーか軽自動車しか選べない、という話もよく聞きます。

 こうした理由から、N-BOXをはじめとした良すぎる軽自動車が大量に登場しても、コンパクトカーはやっぱり必要な存在なのです。むしろ、現在の私たちのカーライフは軽自動車とコンパクトカーが支えている、と言ってもいいほどかもしれません。そしてもっと言えば、軽自動車とコンパクトカーのなかにミニバン、セダン、SUV、スポーツカーといったあらゆるジャンルが存在し、選ぶ楽しみもちゃんと私たちに与えてくれています。

 無理をして大金を払わなくても、実用性やコスパを重視しながらでも、いろんなデザインやタイプから好きなクルマが選べるのは、軽自動車とコンパクトカーの大きな魅力。これからもっともっと、良すぎる軽&コンパクトが登場することを期待しています。


まるも亜希子 MARUMO AKIKO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
MINIクロスオーバー/スズキ・ジムニー
趣味
サプライズ、読書、ホームパーティ、神社仏閣めぐり
好きな有名人
松田聖子、原田マハ、チョコレートプラネット

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