HVよりモーターによる航続距離が長いが価格がネックになり得る
そんなPHV(PHEV)だが、充電方式はさまざま。たとえば、トヨタ・プリウスPHV、アウトランダー&エクリプスクロスPHV(PHEV)は高速道路のSA/PAや道の駅、販売店にあるような急速充電にも対応し、自宅や充電スポットでの100V/200Vの普通充電もOKと、充電のしやすさは文句なしだ。一方、RAV4 PHVや多くの輸入PHV、ボルボのように普通充電のみ対応(価格を抑えるためでもある)する車種もある。
当然、急速充電と普通充電では充電時間が異なり、アウトランダーPHEV & エクリプスクロスPHVの場合、AC200V/15Aの普通充電であれば約4.5時間で満充電。急速充電なら80%充電(バッテリー保護のため満充電にならないのがお約束)まで約25分と、短時間で航続距離をグーンと伸ばすことができるのだ。急速充電のできないRAV4 PHVは、200V/16Aの普通充電で約5時間、自宅で充電設備不要な100V/6Aでは約27時間の充電時間となる。ボルボXC40リチャージプラグインハイブリッドは200Vで満充電まで2.5〜3時間である。
同種のアウトランダーPHEVとRAV4 PHVの選択の場合、そのあたりの充電方式、方法を把握し、どちらが使いやすいかを自身でしっかり見極める必要がある。ヒントとしては、急速充電に対応していなくても、PHV(PHEV)はまず困らない。
ちなみにRAV4 PHVが同じトヨタのPHVのプリウスで可能な急速充電に対応しない理由は、現時点の充電インフラを考慮し、エンジンを積み、自車で発電できることから、ピュアEVの充電利用を妨げない配慮と、さらなる価格アップを避けたからだという。なにしろRAV4 PHVは、満充電、ガソリン満タンでの航続距離は1300kmを超えるのである。ドライブ途中で時間をかけ、充電する必要に迫られることは、ないということだ。万一、ガス欠寸前になっても、どこにでもあるガソリンスタンドに駆け込めば済む。
ところで、国産PHV(PHEV)の大きなポイントとなるのが、AC100V/1500W電源の装備だ。車内外で1500Wまでの電化製品が使え、RAV4 PHVなら最大1500Wの電力を最大約7時間、ガソリン満タンのエンジンを使えば、最大約3日間分の電力を供給可能。
アウトランダーPHEVであればバッテリーとエンジンの発電を組み合わせると、一般家庭電力量で最大約10日分の電力を、高価ではあるもののV2H機器によって供給できるのだから災害時には大きな安心になる。ペットと暮らしている家族が、車内で避難生活するにも適しているというわけだ。AC100V/1500Wコンセントは、HV、PHV(PHEV)の多くの場合、車内に1か所のみだが、アウトランダーPHEVはセンターコンソール後端(後席部分)とラゲッジルームの2か所にある。
HVよりモーターによる航続距離が長く電動車感が強く、充電、給電が可能で、電欠の心配もないPHV(PHEV)はなかなか理想的な電動車のように思えるが、ネックは価格。RAV4の場合、HVより100万円以上高く、プリウスPHV、アウトランダーPHVにしても、HV、ガソリン車に対して75万円前後高くなる。その理由は大容量になるバッテリーの価格が大半を占め、バッテリー価格が高い現状、致し方なし。RAV4 PHVのように、発売してすぐにバッテリーの供給が間に合わず、注文を一時停止しているケースもあったりする。
PHV(PHEV)の魅力、メリットは絶大だが、価格だけ考えると、しばらくはHVがもっとも買いやすく使いやすい電動車になるということだろう。もっとも災害大国、地震大国の日本で、アウトランダーPHEVやRAV4 PHVのような電力の供給、給電、かつ車中泊が可能で、悪路の走破性に優れたSUVのPHV(PHEV)は、アウトドアではもちろん災害時に最強のクルマになることは間違いない。その安心、機能に投資するつもりであれば、割高な価格を超えた価値ある、最良の選択になるはずだ。