義務化されなければEVに積極的にはならない
一方、日産はトヨタに対する事実上の逆張りによって、2010年にリーフを導入するも、ゴーン体制で描いた初期構想に比べて、リーフからの商品・横展開が進まず、2021年登場のアリアまでかなり間が空いてしまった。その代わりに、EV技術開発で得たノウハウを活かしたe-POWERがヒットした。
ホンダについては、EVは規制ありきという考えがいまだに強い。これまでのホンダEVモデルを振り返ってみると、フィットEV登場時、当時の伊東社長は「ZEVありき」と言い、またクラリティEVは日本にアメリカ人ジャーナリストたちを栃木の四輪R&D施設に招いて試乗の機会を与えるなど、こちらもZEVありきは明白だった。また、2020年登場のホンダeでも開発関係者は「欧州CO2規制ありき」とハッキリと言う。
こうした近年の日本でのEV普及状況を見る限り、各メーカーがEVに積極的ではないという印象をユーザーが持つのは、結局、日本にEV生産・販売義務化の規制がないからだといえる。別の見方をすると、日本ではEVに対するユーザーからの要望が限定的であり、需要と供給のバランスが悪い。
こうした状況に加えて、近年はESG(環境、ソーシャル、ガバナンス)投資という文脈でEV開発に対して世界的な注目が集まっており、今回日本政府が打ち出した「2050年カーボンニュートラル」実現に向けた「グリーン成長戦略」でもESG投資に対する世界市場での日本の“出遅れ感”への焦りがにじみ出ている。
いずれにしても、「グリーン成長戦略」を基にしたEV販売台数の義務化が正式に制度化されれば、否が応でも日本メーカー製のEVモデルが増えることになるだろう。