F1は世界最高峰だが歴史が長いのはインディ
2020年のインディアナポリス500マイルレース、通称“インディ500”で、日本人ドライバーの佐藤琢磨が自身2度目の優勝を獲得したことにより、日本でも注目を集めたインディカー・シリーズだが、そもそもF1とインディは何が違うのか? というわけで、いまさらながら、F1とインディの違いを解説したい。
まず、F1はご存じのとおり、1950年に設立されたフォーミュラカーレースの最高峰シリーズで、通常はFIAの世界選手権としてヨーロッパのみならず、アジアやオセアニア、中東、南北アメリカと世界を転戦。2020年は新型コロナウイルスの影響により数多くのイベントが中止となったが、それでもヨーロッパおよび中東エリアを中心に全17戦が開催された。
これに対してインディカー・シリーズは1911年に初開催を迎えた伝統の一戦、インディ500を頂点にシリーズ化を果たしたアメリカのフォーミュラカーレースで、1996年にインディ・レーシング・リーグとしてスタート。2002年にインディカー・シリーズに名称変更を行い、ナスカーと同様にアメリカを代表するモータースポーツに定着した。2020年は新型コロナウイルスの影響で数多くのイベントが中止となったが、それでも計14戦でタイトル争いが展開。
つまり、大雑把に言えばF1が“世界最高峰のフォーミュラカーレース”なら、インディカー・レースは“アメリカ最高峰のフォーミュラカーレース”となる。だが、じつはマシンの最高速度に関してはインディカーのほうが速く、約310km/h前後と言われているF1に対して、インディカーは380km/hをオーバーを記録している。平均周回速度の最高記録についてもF1の262km/hに対して、インディカーが360km/hとF1を凌駕している状態だ。
こう書くとインディカーのほうが、マシンのパフォーマンスが高いように思われるが、最高速および平均周回速度の違いは開催コースが大きく影響している。ご存じのとおり、F1の開催コースはパーマネントのサーキットや市街コースを舞台にしているが、インディカー・シリーズはオーバルコース(楕円形のコース)を主体に開催。もちろん、インディカー・シリーズにも市街地コースやロードコースも設定さえているが、主戦場はオーバルコースで、前述したインディカーの最高速ならびに最高平均周回速度もオーバルコースで記録されたもの。
それゆえに全コースに対応可能なF1マシンに対して、インディカーはオーバルコースに対応すべく、空気抵抗の少ないエアロフォルムを採用してスピードレンジを高めるなど、マシンの特性も大きく異なる。
まず、シャシーに関して言えば、合計10チームのコンストラクターが開発競争を展開するF1に対して、インディカーはイタリアのダラーラ社のワンメイクで「ダラーラIR-18」を全チームが採用。最低重量はF1が746kg、インディカーが745kgでほぼ同等だ。