日本市場ではいまだに人気車となっている
ディーゼルエンジンの適材適所という意味では、アメリカは除外される。アメリカでは大型トラックや、フルサイズピックアップトラックの一部で普及しているが、乗用ディーゼルの割合は極めて低い。
2000年代に独フォルクスワーゲンが、トゥアレグなどSUVを主体とした乗用ディーゼル普及キャンペーンを全米各地で展開したことがある。その各種イベントを筆者は取材している。だが、商品性としてアメリカにはマッチせず、フォルクスワーゲンの戦略は事実上失敗し、さらに2010年代中盤にディーゼル不正が発覚したことで、アメリカでの乗用ディーゼル市場全体として大きな打撃を受けた。
また、中国でも2010年代半ばに起こった、セダンからSUVへのシフト期にディーゼル普及を仕掛けた中位メーカーがあったが、政府のNEV(新エネルギー車)政策強化のなかで乗用ディーゼルの存在感が小さくなった。
こうして、米中欧でディーゼルエンジンの立場が弱くなってきている一方で、日本での乗用ディーゼルはマツダSKYACTIV-D、またトヨタではランドクルーザープラド、ハイエース、ハイラックスのクリーンディーゼルなどがあり、これらモデルもグレードのラインアップのなかで人気車種だ。リセールバリュー(下取り価格)も高く、国内需要のみならず東南アジアなど海外輸出中古車としても人気は高い。
このように、乗用ディーゼルの未来は、前述したように各メーカーは「国や地域の社会情勢や社会インフラを踏まえて、適材適所で対応する」ことになるだろう。