結果的には不要だった! 超絶性能がウリの「GRヤリス」に1.5リッターNA+CVTの廉価グレードが用意された事情 (2/2ページ)

新型コロナウイルスのおかげで存在意義が薄れた

 ただし、実際には2022年よりWRCの車両規定は大きく変わる。現行の最高峰であるWRカーはRALLY 1という車両に変わり、そこには共通のハイブリッドシステムが搭載されることになっている。そしてベース車両については「プロトタイプ」でも認められると変更されている。つまり2022年から参戦するのではればGRヤリスに廉価グレードは必要なかったのだ。

 しかしながら、一般的な市販車の開発スケジュールで考えるとGRヤリスの商品企画が生まれたのは遅くとも数年前であり、2022年からWRCのレギュレーションが大幅に変わることは予見できなかったといっても責められない。また、本来ではあれば2021年からGRヤリスのWRカーを走らせる予定だったが、それが新型コロナウイルスの影響によってリスケジュールされ、2022年の新車両規定からの投入になってしまったことも不可抗力だ。

 というわけで、結果的にRALLY 1という新車両規定によってGRヤリスベースのマシンをWRCに参戦させるのであれば、NA・FFの廉価グレードは不要だったかもしれない。しかし、それは結果論であり、もしレギュレーションの変更が遅れれば、また新型コロナウイルスの流行がなければ、2021年にGRヤリスWRカーを走らせていたはずで、そのためにはホモロゲーションの条件を満たすための廉価グレードは必要だったといえる。

 本格スポーツカーといいながら、GRヤリスにNA・FFのRSグレードが存在する背景には、こうした事情があったのである。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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