新時代に向けてスタートできる準備は整えている メッセージの後半では、菅首相が2050年にカーボンニュートラル(脱炭素社会)の実現をめざすという高い志を示したことを評価しつつ、自動車産業としての注文もつけている。その内容をシンプルにまとめれば、発電時のCO2削減がもっとも重要であり、カーボンニュートラル実現のためには、国家的プロジェクトとして脱炭素な発電方式へのシフトを進めていくべきだと主張している。
たしかに、すべてのクルマがZEV(ゼロエミッションビークル・電気自動車や燃料電池車)になれば、走行時のCO2排出量はゼロにできるが、社会活動全体での実質的なCO2排出量ゼロを目指すカーボンニュートラルにおいては、製造段階でのCO2排出量を減らすことが重要であり、そのためには大元である発電時のCO2排出量を低減しなければならない。はっきりいって、それは自動車産業が単独で決められることではない。
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具体的な方法について豊田会長は触れていないが、ひとまずCO2排出量を減らす発電となると、原発再稼働という政治的判断が必要になるのは自明だ。豊田会長のメッセージにそこまでの意図が含まれているとは思えないが、政府がカーボンニュートラルをいいだしたのであれば、そうした難しいテーマをクリアすべきという政権への要求が含まれていると考えるのが妥当ではないだろうか。
そもそも自動車業界はコロナ危機以前から「100年に一度の大変革期」としてCASE(コネクテッド・オートノマス・シェアリング・エレクトリック:つながる・自動化・共有・電動化)といったテーマに取り組んできた。豊田会長が「変革の準備はできています」というように、いつでも新時代に向けてスタートできるはずだ。そのためには自動車産業に関わる550万人一人ひとりの力が重要というのも、このメッセージが伝えるところだ。
さて、メッセージを語る豊田会長のスーツに17色からなる丸いバッジがついていることに気付いているだろうか。これは国連が定めたSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)のバッジであり、その色は17のゴールがあることを示している。コロナ禍によって変化が強制されるのであれば、それを逆手にとってSDGsの実現に向けた動きを加速させよう、と豊田会長は話した。そのために自動車産業に関わる人が、それぞれ一歩進むことで、全体としては550万歩という大きな動きになるという。
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自動車ファンである私たちも、同様に一歩を進めば、さらに変革への力は大きくなる。自工会の年頭メッセージは自動車産業に関わる人向けとなっているが、対コロナ、気候変動対策などを自分ごととして捉え、できる範囲で実行していけば、そこには明るい未来が待っていることだろう。大いに勇気づけられる年頭メッセージだった。