MotoGPマシンや自立するバイクなどにノウハウが用いられている
少々古い話になるが2011年の段階で、二本足歩行の開発によって得られた知見は二輪の世界最高峰レース、MotoGPマシンに活用されていることが発表されている。こうした考え方は、いまでは市販車にも搭載されることが当たり前となっているウィリーコントロールやトラクションコントロールにつながったといえる。
また、バイクが単独でバランスをとり自立する“倒れないバイク”も発表されているが、その自立制御にもASIMOなどロボティクス開発で得られたノウハウは投入されているという。その自立するバイクは2017年の東京モーターショーで展示されたので、憶えている人も多いだろう。その際にもASIMO開発からのフィードバックといった話はあった。
ASIMOとのつながりをアピールすることはわかりやすさにつながる部分もあって、実際のところどこまでフィードバックがあったのかは不明ではあるが、ロボティクス開発はホンダという二輪・四輪を生み出す総合モビリティメーカーにとってけっして無駄ではなかったといえる。
さて、ホンダのロボティクス開発はどうなっているのか。ご存じのように、2020年4月よりホンダは研究開発体制を大きく変えている。それまで基礎研究から商品開発までは、本田技術研究所という別会社がおこない、本田技研工業はその成果を購入するというスタイルだったが、本田技術研究所の四輪開発組織の多くは、本田技研工業・四輪事業本部ものづくりセンターに統合された。
こうした体制変更により、本田技術研究所は、新価値商品・技術の研究開発に集中することになった。そうした新価値商品の具体例として挙げられていたのが、新モビリティやロボティクス、エネルギーといったカテゴリーだ。つまり、ASIMOの開発には一旦ピリオドを打ったかもしれないが、ホンダはロボティクス領域の開発を完全にやめてしまったわけではない。むしろ、ロボティクス分野は次世代事業の根幹に成長する可能性を秘めている。
おそらく、そうしたロボティクス分野の新プロダクトが出てきたときに、ASIMOの存在は再度クローズアップされることであろうし、ホンダのブランド力にも直結することだろう。ASIMOが歩んできた20年の月日は、かけがえのない価値を育んできたのだから。