ハイブリッドが豊富な選択肢から選べるようになったことが要因
2021年には、トヨタは86やカローラクロスなどの新型車を発売すると思われる。その一方で静かに生産を終える車種もある。プリウスαもそのひとつだ。トヨタのホームページをみると、2021年3月末に生産を終えると告知されている。
プリウスαは、先代プリウスのプラットフォームを使ったワゴンスタイルのハイブリッド専用車で、ひとまわり広い室内空間が特徴だ。荷室に補助席を備えた3列シートの7人乗りもある。
登場したのは2011年で、発売後1カ月の受注台数は5万2000台に達した。2013年ごろでも1カ月当たり8000〜9000台が登録され、当時はプリウス全体の約40%をプリウスαが占めた。両ボディを合計したプリウスシリーズ全体の売れ行きは、1カ月平均で約2万1000台であった。今の国内販売1位はホンダN-BOXだが、2013年は1位がトヨタ・アクア、2位がトヨタ・プリウス(αを含む)になっている。
しかしその後、2015年にプリウスは現行型にフルモデルチェンジしたが、プリウスαは一新されなかった。プリウスαの売れ行きは次第に下がり、2019年の登録台数は1カ月平均で約1000台だ。2020年はコロナ禍の影響もあり、約500台まで下がった。
販売店にプリウスαについてたずねると、以下のように返答された。「プリウスαは、発売当初は好調に売れましたが、最近は人気が下がっています。以前はハイブリッドを搭載する車内の広いクルマが少なかったですが、今は豊富に選べるため、プリウスαの売れ行きも減りました」。
この指摘どおり、プリウスαが発売された2011年の時点では、車内の広いハイブリッドは少数だった。それが2013年になるとコンパクトワゴンのトヨタ・カローラフィールダーにハイブリッドが加わる。2014年にはトヨタ・ヴォクシー&ノアが現行型にフルモデルチェンジされ、同様にハイブリッドを設定した。2015年にはトヨタ・シエンタも現行型に一新され、ハイブリッドを加えている。さらに2019年に登場したカローラツーリングにも、ハイブリッドが用意される。
このように空間効率の優れたワゴンやミニバンにハイブリッドが数多く設定され、プリウスαのニーズは薄れた。同様のことが5ドアハッチバックのプリウスにも当てはまる。先代プリウスが発売された直後の2010年には、1カ月平均で約2万6000台が登録された。この時点で2代目の低価格グレードは継続販売されていたが、プリウスαは加わっていない。
それがいまの登録台数は、コロナ禍の影響を受ける前の2019年でも、プリウスシリーズ全体で1カ月平均が約1万台だ。2020年には約4200台まで下がった。
さまざまな車種にハイブリッドが普及して、プリウスの需要が減るのは当然の成り行きだ。ただしプリウスには20年以上の歴史があり、いまでは環境に優れたクルマのブランドにもなっている。プリウスをハイブリッドのスペシャルティカーとして、つねに最先端技術を投入しながら、αを含めてラインアップを続ける方法もあるだろう。