自動車からのCO2排出だけを考えればEV化が最適である
CO2削減という視点だけで語れば、バイオ燃料への期待はできる。しかしいまは、一気に電動化へ向けた転換が進んでいる。しかも、新型コロナウイルスの流行という不測の事態も重なり、人の行き来はもちろん、物流の先行きもなかなか見通せない状況だ。そうしたなかで、輸入に頼らない食料や水の確保は、暮らしの安全保障という面で重要度を一層高めていく可能性がある。
エンジンが、一気になくなるということはないにしても、その用途はおもに発電用となり、車載エンジンの数は減っていくだろう。電気自動車(EV)の利点は、単にCO2排出量の削減だけではない。いくつかの自動車メーカーがウェル・トゥ・ホイールであるとか、ライフ・サイクル・アセスメントでのCO2排出量を問えば、EVが必ずしも最善ではないとの見解を示すが、それらは一元的な視野でしかない。
排出ガスゼロのEVは、大気汚染も抑制する。米国カリフォルニア州や、中国などがEVを積極的に導入しようとしている理由のひとつが、大気汚染の防止である。発電用とはいえ、エンジンを使う以上、排ガスは出てしまうため大気汚染の原因になる。
たとえば首都圏も、2000年の東京都のディーゼル車NO作戦によって大気汚染が大きく改善されたが、その後、乗用車でのディーゼル車が台数を増やしたことによって再び大気汚染が起きている。クリーンディーゼルとは呼んでも、ガソリンエンジンより大気汚染物質は多く排出しているからだ。そのことを、自動車メーカーは明確に消費者へ伝えていない。
なおかつ、緊急事態での家や家庭電化製品へのクルマからの給電においても、EVなら排出ガスゼロで安心して使えるが、エンジンを使うハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)などでは、車載バッテリーの電気を使い切るとエンジンで発電するため、排出ガスが出て、一酸化中毒を起こさないように換気に気を配らなければならない。
EVを推進していない自動車メーカーは、以上のように効用を切り分けて示し、あたかもEVだけが次世代でないと語るが、EVに及ばない側面を隠しているのである。
話がそれたが、そのように、次世代車の目指すべきはEVであり、エンジンを減らしていくことが未来を拓くのであって、バイオ燃料もまた、使い道は必ずしも伸びないと考えるのが素直ではないだろうか。