政府はホントに本気? 2030年の「脱・純ガソリンエンジン車」が非現実感を伴うワケ (2/2ページ)

政府の圧倒的な力で電動化を進める中国でも苦労している!

 大きい政府が力わざで車両電動化を進める中国ですら、手厚い補助金などを設けても想定よりも普及が進まず苦労している。その中国政府は2020年6月に補助金などのインセンティブ対象となる“新エネルギー車(中国語では『新能源車』/PHEV、BEV、FCVが対象)”の対象から外れていたHVを「低燃費車」として新たに優遇対象にすることを決定し、2022年1月から実施することになった。この動きも新エネルギー車への移行が思うように進まないなかで、HVでワンクッション置いて新エネルギー車へ消費者を導こうとしているのではないかとの声もある。

 中国の街なかを見ていると、低年式車というか、かなり年季の入ったクルマを多く見かける。その様子を見ていると、単純に新車購入に際してだけ手厚い優遇を与えるのではなく、電動車への積極的な“代替え”を促すには、低年式下取り車に対する“スクラップインセンティブ”の設定も必要ではないかと考える。

 たとえば車齢13年以上の下取り予定車に関しては抹消登録を前提に、以前あったような購入補助金を出すというものである。日本では短期間でクルマを乗り継ぐひとと、10年以上は軽く保有を続けるひとに二分されている。日本車は故障が少ないので、壊れるまで乗り続けるひとも目立っているとのこと。そこで、HVとPHEV、そしてBEVとFCVとで補助金交付額に差を与え(BEV、FCVのほうが手厚い)て、新車購入に際する優遇と合わせれば電動車普及にも弾みがつくだろう。

 要は政府がどこまで本気なのかにかかっている。日本車の得意なHVだけ増え続けるだけでも、「我が国は車両電動化が進んでいる(世界からは笑われそうだけど)」と形だけいつものように取り繕うのか、それとも脱炭素社会を本気でめざすなら、ゼロエミッション車のみ販売が許されるような厳格な対応を段階的にとるのか、民間に丸投げせずに、政府がロードマップを作るなど、本気をどこまで見せるかで、今後見えてくる風景はかなり変わってくるはずである。

 今回の“脱ガソリン車”の話は、自動車メーカーや業界団体にとって“寝耳に水”状態で出てきた話とのこと。電動車普及を外資に頼ろうとしているとは思えないが、自動車業界と膝を突き合わせて、早く現実可能な方向に持って行って欲しいものである。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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