e-POWER搭載のセダンが登場すれば状況は変わるか
ただハッチバックスタイルというのがいまひとつという意見もある。クラウンコンフォートが生産終了してからも、セダン型タクシーを求める声は結構ある。カムリがここのところ増えているが、ボディサイズはかなり大きい。プレミオ&アリオンも目立っているが、いよいよ生産終了になる。
そのなかで筆者が注目しているのが、タイでは“アルメーラ”、北米では“ヴァーサ”と呼ばれている日産のコンパクトセダン。先代ノートと同じVプラットフォームを採用したセダンであり、拡大解釈すれば先代ノートの“セダン版”と言っていいモデルだ。
北米ではノートそのものが“ヴァーサ”としてラインアップしていたのを受け継いでいる。タイでは1リッターターボ、北米では1.6リッターエンジンを搭載。ボディサイズは全長4495×全幅1740×全高1460mm、ホイールベースは2620mmとなっている。日本仕様のカローラセダンと比べると、全長と全幅は同じで全高が25mm高く、ホイールベースは20mm短くなっている。
シルフィの後継モデルとして日本でもこのコンパクトセダンを新型ノート同様にe-POWERユニットのみにして市場投入し、その際には新型ノートのようなフリート販売向けグレードを設け、それだけにしてタクシー専用車両として販売してみることを、筆者は提案したいのである。車名はズバリ“セドリック”。現時点では、このモデルにe-POWER搭載仕様がないことや、タクシー専用車両にすればニーズが限られるので割高な価格になるのではといったこともあり、およそ日本での販売は現実味がないといえる。だが、タクシーだけでなくレンタカーやカーシェアリング、法人営業車などのフリート販売専門モデルとして販売してみると、少しは現実味を帯びそうな気もする。
タイミングよく、菅政権は2050年までに“脱炭素社会”の実現を表明しており、報道では2030年代前半までに純粋なガソリンエンジン車の事実上の販売禁止を進めようとしている様子。ただ、リーフを販売する日産の販売現場ですら、「いきなりノートをBEV(純電気自動車)専用にするのは、敷居が高すぎる」という話も聞く。そのなかで、全国で廃業が加速しているLPガススタンドの動きを見れば、発電用にガソリンエンジンを搭載している、e-POWERを搭載するモデルをタクシー車両として積極導入し、その先にロンドンタクシーのように、外部からの充電も可能にするというのも、けっして夢物語ではないはず。
LPガススタンドよりは、総数は多いもののガソリンスタンドの廃業も目立っており、山間部などでは町内にガソリンスタンドが1軒もないというところも出ている。日本では最終的にガソリンスタンドの利用が困難になった地域であっても、電気はしっかり通っているので、BEV化は山間部などから進んでいくのではないかとも言われている。そのようななかで山間部や都市部を問わずBEVタクシーへのつなぎとして、e-POWER搭載タクシーの普及は業界でもニーズの高いセダン型にすれば、十分期待できると考えるが、そうはいってもタクシー車両自体のマーケットが小さいので、なかなかメーカーに重い腰をあげてもらえないのも、また事実なのである。