読者の「4つのギモン」にレーシングドライバーが回答! 意外と知らないクルマの謎 (2/2ページ)

LSDの効果は通常体感できないように設定されている

3)街中でも意味ある? LSDはどうすれば効果を体感できるのか

 LSD(リミテッドスリップデフ)は作動差制限装置のこと。一般の車両にはオープンデフといって内輪差によるスリップロスを解消する装置が装着されている。だがオープンデフだと片側の車輪が滑りやすい路面で空転を起こすと前進できなくなってしまう現象が起こる。これを解消するためにLSDが開発された。多くはスポーツカーやレース用車両がコーナリング時に内輪が浮き上がり空転してトラクション(駆動力)が掛からなくなってしまうことが起きないよう装着する。

 結果、コーナリング中もトラクションがかけられ、車両姿勢を制御したり高い速度でのコーナリングが可能になる。極端なものはデフロックという左右駆動輪を直結化し、一切の車輪速差を許容しない装置もある。LSDは雨天や雪道など滑りやすい路面で旋回する際には一般走行でも有効で、オープンデフならスタックしてしまうような路面でも走破できる。しかしデフロックまで行うと内輪差を一切吸収できないのでブレーキング現象が起き、小さなRのカーブでは旋回しづらくなってしまうのだ。

 サーキット走行やドリフト走行では必需品といえるが、トルセン式やヘリカル式、機械式にブレーキLSDなどさまざまなシステムがあり、作動差制限の強さを示すバイアス比によっても特性が変わる。一般車は日常的には低ミュー路でも走行しないかぎりLSDの効きを体感できないよう設定するのが普通だ。

4)EV感ゼロのマイルドハイブリッド! 本当に効果あるの?

 うん、いい質問だ。ひとくちにマイルドハイブリッドといっても、メーカーやシステムによって効果も存在理由もさまざまだ。トヨタが初代プリウスに世界初となるシリーズ・パラレル方式のハイブリッド(HV)を搭載し発表したことで世界中のメーカーは驚愕した。多くのメーカーがすぐに対抗しようとしたが、トヨタ自動車がHVシステムに関して多角的な特許を取得していて、同じようなシステムのHV車を売り出すことができなかった。トヨタ方式を回避してHV車とするにはエンジンをジェネレーターモーターでアシストするような方式がもっとも開発費が抑えられ、生産もしやすかっただろう。

 しかし、EV走行モードを持たないエンジンアシスト方式ではフルハイブリッドのプリウスと競うほどの競争力はなく、ユーザーの理解も得られなかった。そこで「マイルドハイブリッド」と呼んでフルハイブリッドシステムとは距離を置いて、存在意義を定着させようとした経緯がある。

 現在はベルトドライブでジェネレーターモーターに給電して短時間だけエンジンの加速をアシストする方式や、リチウムイオンバッテリーを搭載して発電ロスを少なくするなどの簡易的なマイルドハイブリッドまで登場してきていてユーザーは混乱するばかりだ。少なくともエンジンをかけないで発進できるEVモードを備えていなければHVを名乗れないルールとすれば混乱も少しは抑えられたと思うのだが。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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