各国で使いやすいクルマを作ることがユーザーの信頼を得た
さらにトヨタがほかの自動車メーカーともっとも違うのは、『自動車が日本経済のけん引役になろう』という方向性を豊田章男社長が示したことだ。グローバル企業として自社のことだけを考えるのではなく、日本の一員として日本経済のけん引役を目指すというマインドが、逆境における頑張りにつながったといえるのではないだろうか。
その証拠に、トヨタのクルマは日本で売れているし、日本で使いやすいクルマとなっている。まずファクトでいえば、2020年度上半期(4月~9月)の登録車販売ランキングにおいてトヨタ車はトップ10のうち6台を占めている。1位ヤリス、2位ライズ、3位カローラとトップ3も独占した。そのほかアルファードやルーミー、ハリアーといったモデルがトップ10に名を連ねている。グローバル展開はしているが日本で生まれ、日本のユーザーのことを考えてきたことで、売れ続けているといえる。
とくにカローラは、グローバルモデル化によって3ナンバーになったといいながら、日本仕様はショートかつナローな専用ボディとなっていることで知られている。数が出るから日本市場にアジャストすることができ、日本向けだからよく売れるというということなのかもしれないが、トヨタは日本市場にきちんと向き合っている。
他社で聞くような「グローバルモデルなので仕方がないんですよ……」といった言い訳めいたクルマづくりはしていないといえる。もちろん、トヨタにもグローバルモデルそのまま日本向けにローカライズしたモデルもあるし、レクサスなどはそこに価値があるともいえるが、少なくとも日本で売れているラインアップを見ていると、ホームカントリーである日本を大事にしていることが感じられるのは事実だ。
グローバル企業が、日本経済のけん引役を自認し、本国向けのものづくりをしているということは一見するとネガティブに思えるかもしれないが、結果としてトヨタのそうした姿勢が、今回のコロナ禍におけるいち早い回復につながっているといえそうだ。