スタッドレス装着の4WD車が陥りがちなワナ! レーシングドライバーが警告する雪道走行の「危険性」とは (2/2ページ)

坂道ではお互いの状況を確認して譲り合うことが大事

 坂道においても同じことが起こる。2WD車が坂道発進できずにいるような場所でも4WD車なら登れてしまうことが多い。そんな急坂でも登るのは容易いが、その先の下り坂を登り坂と同じような安心感を持って下りていけるかというと、じつは「否」なのである。

 どちらのケースでも言えるのは、4WD車はトラクションには優れるが、曲がるシーン、坂道を下りるシーンでは2WD車と同レベルであるという認識が欠如していることによる。

 考えてみてほしい。4WD車といえどもカーブを曲がるときは前輪を転舵し、4輪のグリップ力で曲がる。その仕組みも特性も2WD車に対して有利性はない。坂道を降りるときはブレーキをかけながら下るわけだが、ブレーキに関しても4WD車も4輪のブレーキを使って降りる。それも2WD車と何ら変わりなく、ABS(アンチブレーキロックシステム)だけが制御的な頼りとなるだけだ。

 発進・加速性能はほぼ倍。旋回および制動性能は2WD車と同等という4WD車の特性を十分に理解してドライブしないと極めて危険なのだ。

 山道の狭い坂道では、ときに譲りあう必要がある。この際、一般的には「登り優先」と言われている。とくに乾燥舗装路であれば登り優先は理解できる。急な登り坂では一旦停止してしまうと再発進が難しい。3ペダルのクラッチ付マニュアルミッション車が主流だった時代は「坂道発進」こそが免許取得時の最難関項目だった。現代は2ペダルのAT車がほとんどで坂道発進も特別難しいことではなくなった。だが3ペダル車がなくなったわけではなく、トラックやバスなどクラッチ付車も多いので登り坂優先のルールは現代も引継がれている。

 だが、雪道の坂道においては、それを前提に走ることは危険だ。雪道の急な下り坂においては4WD車も2WD車も等しく止まり辛い。ゆっくり走っていて対向登坂車に譲る気持ちはあっても、クルマが止まってくれるとは限らないのだ。登坂側が相対する下り車両の車輪を注視し、車輪が止まっているのに車体が動いている場合などは「止まれない」状況だと察知し、逆に停止して譲る対応が必要だ。結果として自分が立ち往生する事態に陥ってしまうかも知れないが、衝突してしまうよりはずっとましだ。発進駆動力に優れる4WD車であれば気持ちに余裕を持って譲れるだろう。4WD車の特性をよく理解し、安全な冬のドライブに徹してもらいたい。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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