商用車は一台あたりの利幅が少ないカテゴリーだ
さらにメーカー希望小売価格を見ればわかるように、非常に安価であることも求められている。スズキ・キャリイは73万5900円~、ダイハツ・ハイゼットトラックは69万3000円~という価格設定になっている。こうして廉価グレードにはエアコンやパワステが装備されていないほどだ。その価格帯を見ればわかるように、はっきりいって軽トラは一台当たりの利幅(儲け)が非常に少ない。単純にビジネスとしてみれば積極的に参入しようと思うカテゴリーとはいえないのだ。
ご存じのとおり、いまや軽トラは前輪の上にシートがあるキャブオーバースタイル、軽1BOXバンはタイヤが鼻先で、エンジンの上に座るセミキャブオーバースタイルとなっている。つまり軽トラと軽1BOXはそれぞれ別のボディを用意しないといけない別設計となっているのだ。
こうした違いは軽トラがとにかくあぜ道での小回りを重視されるためショートホイールベースであることが求められ、軽1BOXには高速走行での安定性が要求されるためといえる。
具体的には、農業や漁業といった一次産業のユーザーをメインターゲットに考えて作られているのが軽トラだ。軽1BOXバンは宅配などの物流を支え、また工事現場などに活躍する職人の相棒となっているという違いがある。いずれにしても、こうした軽商用車がなくなってしまうと、現在の社会は回らなくなる。儲けが少ないからといってなくなってしまうと困るジャンルのモデルといえる。
スズキとダイハツが軽トラを用意しているのは、これまでも軽自動車という国民の足となるクルマを作り続けているという自負によるものといえる。ブランディング的にいえば、軽トラを作り続けていることで軽自動車ユーザーからの信頼を得ているともいえるだろう。