快適にもスポーティにもドライブを満喫させてくれる一台!
Premiumと名の付くグレードは、自然吸気エンジン×CVTを搭載する「Premium」とターボエンジン×CVTでパドルシフトを搭載する「Premium Tourer」の2つの仕様が用意されている。どちらも、ドア下部にシルバーのモールディングをあしらっており、足もとには、グレーメタリック塗装の15インチのアルミホイール、ブリヂストン ECOPIA 165/55R15が装着されている。
今回は、ターボエンジンを搭載した「Premium Tourer」に試乗。さっそく、驚かされてしまったのは、乗り心地の良さ。敷地内から一般道に向かう出口の段差を乗り越えてみたところ、軽としてはタイヤが薄い15インチ仕様であるにも関わらず、嫌な突き上げ感を感じさせないのだ。街を流すと、ゆったりと優しく、しなやかな身のこなしをみせ、カーブや交差点を通過するときは、減速からコーナーの立ち上がりに向けて、車体が不用意に揺すられるようなこともなく、思いどおりに駆け抜けていくことができる。
64馬力を発揮するターボエンジンは、低速域でもターボラグが少なく、扱いやすいトルク特性を備えている。アクセルを踏み込めば、小さいボディを軽快に走らせていける気持ち良さともに、わだちや荒れた路面では、タイヤを路面に沿わせながら、安定性の高い走りを披露してくれた。
また、走行中に車内が静かであることも快適性の高さに結び付いている。ターボの場合はそこまでエンジン回転を高めなくても、余裕をもって走れるところもあるが、Premium以上のグレードには、遮音性の高いフロントガラスが採用されているため、より静粛性が高い。これまで、上級クラスのクルマに乗っていたユーザーがダウンサイジングで初めて軽に乗り換えるケースでも、違和感を感じにくいだろう。
そして、走り好きに注目して欲しいのがスポーツグレードの「RS」。トランスミッションはCVTまたは、6速MTの2種類が設定されているが、今回はMT車に試乗することができた。
RSの外観の特徴は、ブラック色を効果的に組み合わせた専用のエクステリア。フロントグリルやフォグライトのガーニッシュ、サイドモールなど、ダーククロームメッキで統一感を与えていたり、15インチのアルミホイールはPremium Tourerと似たデザインながら、マットブラックとすることで、引き締まった印象に。ブラックアウトされたルーフやドラミラーも手伝って、低重心でワイドなイメージを強調している。
RSの車内は、内装色をブラック基調としながらも、ステアリングやシフトまわりにシートなど、所どころオレンジ色のアクセントカラーがあしらわれている。MTのシフトレバーは、1999年に登場したFRの2シーター スポーツカー「S2000」から譲り受けたものだという。
運転席に乗り込むと、クラッチが踏みこめる位置にシートスライドを前寄りに合わせて、運転姿勢を整えていく。ここで少し残念だと思ったのが、ハンドルの調整機構は上下を調節するチルト機構しかついていないこと。N-WGNでは上下に加えて、体格に合わせて前後の調整ができるテレスコピックが設定されていただけに、N-ONEにそれが付いていないのが口惜しい。仕方がないので、それ以外の部分をどうにか調整しながら、走り出してみることに。
すると、期待していた以上に気持ちがいいドライブフィールを満喫させてくれる。まず、シフトレバーを操作する際の感触がいい。インパネから突き出たシフトレバーは、フロアシフトと比べて高い位置にレイアウトされているにもかかわらず、シートにしっかりと身体を支えられたドライバーが左手を伸ばした時に、自然に操作できるように工夫されている。そう感じる理由の一つは、変速操作がショートストロークで行えること。手のひらに軽く力を込めて押したり、手のひらを返して手前に引いたりすると、スコッ、スコッと確実に狙ったゲートに入れられるもので、変速の際の手応えも絶妙なところに落とし込まれている。
低いギヤに落として、エンジンを高回転まで引っぱってみると、7000rpm回転まで、気もちよく回っていってくれる。レッドゾーン手前ギリギリまで回していけるのは、MT車だけの特権だ。ターボエンジンには、電動ウェイストゲートバルブを採用し、レスポンスが向上しているが、ペダル類やシフト、ハンドル操作を駆使しながら、リズミカルに走らせていく場面では、クルマと一体感を得て走る楽しさに目覚めさせてくれる。FFターボ×6速MTは軽自動車として初めての組みあわせ。高速道路を移動する時は、多段化した恩恵で、トップギアはエンジン回転を低めに保って巡航できるため、振動やノイズを抑えて走れて快適に。低燃費走行も期待できそうだ。
おまけに、今回のN-ONEはドライバーのうっかりミスで起こる衝突事故のリスクを低減する「Honda SENSING」が初搭載され、全グレードに標準装備されたことにも注目したい。RSのMT車の場合のみ、クラッチをつなげて変速操作を行う関係上、前方/後方誤発進抑制機能、渋滞追従機能がつけられていないが、スポーティなRSでも、CVT仕様を選べば、渋滞の完全停止まで対応するアダプティブクルーズコントロールが使えるようになったというのは嬉しいニュースだ。
ちなみに、RSのCVT仕様は、変速制御MAPがRS専用にセッティングされている。Sレンジに入れて走ると、アクセル操作のレスポンスが向上。ワインディング路でブレーキングを行うと、ステップダウンシフト制御を行うというもので、エンジン回転を高め、カーブの立ち上がりで加速しやすい態勢に持ち込める。パドルシフトで操作ができるので、ハンドルから左手を離さず、2つのペダル操作に集中しながら、スポーツドライビングを存分に楽しむことができるのだ。
4つのモデルそれぞれに内外装や走りのキャラクターを明確に表現し、「N-ONE」としての魅力を深めながら、可能性を広げてみせた第2世代の新型モデル。外観はあまり変わらないように見えていたが、基本性能の大幅な進化によって、快適にも、スポーティにもドライブを満喫させてくれる一台に仕上げられている点に懐の深さを感じた。