前に進む力を引き止めているためリヤが沈んでいるように見える
クルマが停止している状態でサイドブレーキを引くと、リヤ側が沈むように感じることがある。どうしてこういう動きが生じるのだろうか。
まずAT車の場合、Dレンジのまま停車すれば、クリープ現象でクルマには前に進もうとする力が働いている。その状態でサイドブレーキ、つまりリヤ側だけブレーキを効かせれば、動こうとしたクルマを後ろから引っ張ることと同じになるので、リヤが下がり気味になりフロントが浮き上がるようになる。
また走っている状態からフットブレーキでクルマを止めると、ブレーキをかけることでフロントサスは大きく縮む。そしてブレーキによる止める力と前に進もうとするクルマの運動エネルギーの釣り合いがとれたときに、クルマは完全に停止する。このとき、クルマにはブレーキを離せばまだ進もうとする慣性が残っていて、いわばブレーキという壁に寄りかかっているような状態なので、サイドブレーキを引いて、フットブレーキを離すと、フロント側のせき止められていたエネルギーが解放され、一瞬進もうとするが今度はリヤ側に引っ張られて、フロントが浮いて、リヤが沈む。
細かいことをいえば、フロントサスにはキャスター角がついているので、クルマはイニシャルでリヤタイヤ側に寄りかかっている状態なので、サイドブレーキでリヤタイヤを固定すればリヤに荷重がかかるような状態にもなる。
サスアームの角度によってはリヤにブレーキをかけることで、スクウォートトルクが働き、リヤタイヤが車体を後ろに引っ張る力が生じ、リヤサスが沈むこともあるだろう。とくにトーションビームサスだとトレーリングアームの付け根が前方に伸びているので、リヤブレーキが効く→タイヤとトレーリングアームの付け根が離れようとする→トレーリングアームが水平に近づこうとする→リヤサスが沈むという構図にも……。
そのほか、車重や前後の重量配分、ダンパーやスプリングの固さ、サスペンションのジオメトリー、EPB(電動パーキングブレーキ)の効かせ方なども影響するので、クルマによって差はあるが、多かれ少なかれ、どのクルマもサイドブレーキを引くとリヤは沈むような感じになるはずだ。