まさに公道最強マシン! あり得ないほどチューニングされた「怪物」ワークスコンプリートカー5選 (2/2ページ)

エンジンチューニングや専用設計で高額になったモデルも存在!

3)バージョンニスモ・タイプ380RS

 無限RRと同じく2007年6月にデビューした、Z33型日産フェアレディZをベースとする「バージョンニスモ・タイプ380RS」は、同年1月に発表されたレース専用モデル「タイプ380RSコンペティション」の公道仕様と言うべきもの。VQ35HR型3.5リッター V6エンジンのストロークをアップして3.8リッターとし、ピストン、コンロッド、クランクシャフトも専用品に変更したエンジンを、吸排気系や空燃比、点火時期、VTCなどを公道向けにデチューンすることで、高い耐久性と排ガス性能を確保。それでも257kW(350馬力)/7200rpm&397N・m(40.5kgm)/4800rpmと、VQ35HRの230kW(313馬力)/6800rpm&358Nm(36.5kgm)/4800rpmを遥かに凌ぐパフォーマンスを手に入れている。

 90mm長いノーズやワイドフェンダーモール、リヤウィング&ディフューザーといったエアロパーツ、本革/アルカンターラコンビシート、フロント245/40R18 93W&リヤ275/35R19 96Wのブリヂストン・ポテンザRE-01Rおよびレイズ製鍛造アルミホイール、前後に補強材とヤマハ製パフォーマンスダンパーを追加しフロントピラーとルーフ接合部の溶接面積も増加させたボディなどは、通常の「バージョンニスモ」と共通だが、それら自体が380RSを当初より想定して開発されたもの。300台限定で価格は539万7000円と、「バージョンニスモ」より約100万円高い設定だが、レーシングエンジンの高性能と官能性が約100万円で味わえるという希有な1台だった。

4)ニスモ400R

 現行V37型日産スカイラインが2019年7月のマイナーチェンジとともに追加した高性能モデルにその名を与えたことでも知られる「ニスモ400R」は、R33型スカイラインGT-Rをベースとして1996年にデビュー。RB26DETT型2.6リッター直6ターボエンジンのボア・ストロークとも拡大(86.0×73.3mm・2568cc→87.0×77.7mm・2771cc)して、吸排気系や動弁系、冷却系、タービンなども専用品とされた「RB-X GT2」型エンジンは、車名のとおり400馬力/6800rpm&47.8kg-m/4400rpmを叩き出すに至っている。

 それに合わせてフロント開口部が拡大され、ツインプレートクラッチやビルシュタイン製ダンパー、275/35R18のブリヂストン・ポテンザRE710Kai、チタン製フロントストラットタワーバー、耐フェード性を高めたNISMOタイプ2ブレーキパッドなども採用。スチール製に対し7.7kg、約50%も軽く慣性モーメントも約40%少ないCFRP製プロペラシャフトを採用したのも当時大きな話題を呼んだ。

 まさに“コンプリートカー”と呼ぶに相応しいフルチューンが施されたこの400R、99台限定で1200万円というプライスタグを提げていたが、実際に販売されたのは55台と言われている。

5)オーテック・ザガード・ステルビオ

 さて、そんな400Rとは異なる方向性で全面的に手が加えられたワークスコンプリートカーが、その7年も前、1989年に誕生している。それが、歴代スカイラインの開発責任者として知られる櫻井眞一郎氏が初代社長となったオーテックジャパンと、イタリア・ミラノのカロッツェリア、ザガートとの共同開発によって生まれた「オーテック・ザガート・ステルビオ」だ。

 2代目レパードをベースとしながらも、そのエクステリアは窓ガラスを含めて大半がザガート流の極めて前衛的なデザインに変更されており、なかでもフェンダーミラーを内蔵したCFRP製ボンネットが大きな特徴。手作りのボディ外板もアルミ合金製とされ、軽量化にも配慮されたことがうかがえる。インテリアは2代目レパードと共通の部品が多いものの、本革や本木目パネルが多用され、その質感は格段に高められていた。

 走りに関しても全面的にチューニングが施されており、VG30DET型3.0リッターV6ターボエンジンはベース車の255馬力/6000rpm&35.0kg-m/3200rpmに対し280馬力/6000rpm&41.0kg-m/2800rpmにまで性能アップ。サスペンションも専用セッティングで、タイヤサイズも225/50R16 92Vとされるなど、「すべてに最高を目指し開発された」というステルビオにふさわしいものとなっている。

 そんなステルビオは全世界200台・日本100台の限定モデルで、車両本体価格は1870万円という、まさに破格の超高級GTだった。


遠藤正賢 ENDO MASAKATSU

自動車・業界ジャーナリスト/編集

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