「タイプR」の歴史で初めてターボを搭載したモデル
「シビック・タイプR Limited Edition試乗会のご案内」。
招待状を手に向かった先は鈴鹿サーキットである。空は青々と晴れ渡っており、生暖かい海風が優しくそよいでいた。
招待状の内容は物々しかった。
「ヘルメット、レーシングスーツ等のレーシングギア一式をお持ちください。なお、レース経験者のみの試乗とさせてもらいます」。
編集部への内容を含んでいた。つまりは、素人では危険であり、クラッシュの可能性もありますので安全装備の用意をお願いしますというわけである。まるでレーシングカーのテストであるかのような殺気だった空気感だったのである。
それも、いざ走り始めると納得する。先導車に従い、追い越し禁止というルールが敷かれており、「ちぇ」思わず舌打ちを仕掛けたのも一瞬のことだった。天下のF1グランプリサーキットをレーシングギアフル装備で走行するのに、頭を抑えられたパレード走行を予想したものの、走行ペースには一点の緩さもない。99%全開走行である。「ついて来れるものならついてきな」そんな容赦のない限界走行だったのである。
搭載するエンジンは直列4気筒2リッターターボ。最高出力320馬力/6500rpm、最大トルク400N・m/2500-4500rpmを絞り出す。NSX-Rから始まった「タイプR」の歴史のなかで、初めてのターボマシンである。それゆえに高回転型ではなく低中回転域から怒涛のトルクが湧き上がる。それでいてアクセルレスポンスは鋭く尖っており、右足に力を込めれば、イライラすることがまったくパワーバンドに突入する。