「自動運転」というワードだけが一人歩きしている
自動ブレーキは近赤外線レーザーや音波ソナー、単眼、多眼カメラなどで前方車両や障害物を認識し、走行速度と障害物までの距離を算出しブレーキを自動でかける仕組みだが、メーカーや仕様によって認知機能はさまざま。前方に壁があっても認識できなかったり、歩行者や自転車など動く物だと検知できない機能は完璧ではないのだ。雨天や西日による逆光、雪や泥などの汚れで検知機能が作動しないこともある。
また夏タイヤで雪道を走っている場合など、障害物を検知できてブレーキをかけても、タイヤがグリップせずに衝突してしまうこともある。このように自動ブレーキひとつとってもまだまだ完全なものはないという実情をすべてのドライバーは知るべきだ。
「自動運転」というワードだけが一人歩きしていて、レベル2程度でも「自動運転」とうたわれるケースがあることも問題だ。そのCMコピーを信じてクルマを購入したユーザーが装置の実力を試そうとして事故を引き起こしてしまうこともありえる。我々自動車メディアのテストでも自動運転など運転アシスト機能のテストをすることは専門の設備と安全が担保された状況がなければ行わない。一般ドライバーが一般道で試すなどというのは犯罪に近い行為だと肝に命じるべき。
「法の不知はこれを許さず」と刑法38条3項に定められているが、ドライバーに当てはめれば運転するクルマの機能を熟知し、けしてそれを無闇に試さず、安全に運転する義務があるはず。自動ブレーキ機能を100%完璧に機能させられるようにならない限り、自動運転など夢のまた夢なのだ。
そして機能が完璧に機能するようになっても、機械である以上いつ故障するか、エラーを引き起こすかもしれない。ドライバーが安心して居眠りしたり、よそ見したり、スマホでメールを打つなんて時代は多分来ない。運転アシスト機能は正しく理解して使いこなせば事故の減少効果は大きい。メーカーもメディアも、もっと正しい情報の拡散が必要なのではないだろうか。