同じパーツでもレーシングカーと市販車では目的が異なることも
そもそも論でいえばレーシングカーの大きなウイングやカナードがコーナリング性能を高めることを主たる目的としているのに対して、多くの市販車の場合は高速安定性、直進安定性が目的という違いがある。ダウンフォースによってボディを押し付けるのではなく、ボディのサイド面を抜ける空気も含めて、乱れをできるだけ抑え、“きれいに空気を流す”ことが市販車のエアロダイナミクスとしては重要だったりするのだ。そのため、これ見よがしな大きなウイングではなく、どうしてもスマートな形状になりがちといえる。
公道を走る市販車においてはさまざまな規制があることも形状に影響を与えている面がある。リヤウイングが車幅を超えてしまうことはNGであるし、翼端板やカナードなども突起物とみなされないような形状にしなければならない。さらに場所によっては歩行者保護なども考慮しないといけないこともある。また、最低地上高も確保しないといけない。
公道を走るレーシングカーとしてはWRCマシンが思い浮かぶが、保安基準的な面でいえばあのようなスタイルを市販車に与えることは難しいと言わざるを得ない。
最近、問題が大きくなっているのは年々厳しくなる騒音規制。エアロパーツで規制に引っかかるほど五月蠅くなるということは考えづらいが、極端に大きな風切り音を生み出すような形状はNGだ。さらに風切り音はドライバーやパッセンジャーにとっても嫌われるノイズであり、市販車としての快適性を考えると対策すべき要因だ。
このように保安基準、燃費性能、騒音規制などを考慮するから、市販車のエアロパーツはレーシングカーのような尖った形状ではなく、控えめな印象になりがちなのだ。