多くの台数が捌ける商用車はFRにすることが可能
もちろん存在していない、と言っても過去には存在しており、もっとも最近までFRレイアウトを採用していたのは1984年まで販売されていた三菱の4代目ミニカで、ゴリゴリのスポーツモデルではなかったものの、軽自動車として初めてターボエンジンを搭載したのもこのモデルだったのだ。
では、なぜ現在はFRレイアウトの軽自動車が存在していないのかというと、まずはスペース効率だ。前述したようにフロントセクションにエンジンから駆動系までほとんどをまとめることができるFFは、室内空間を広く採ることができる。
ご存じのとおり軽自動車はボディサイズが決められているため、限られたサイズのなかで最大の室内空間を実現するためにはFFレイアウトが必要不可欠ということになるのだ。
また、多くの車種がFFレイアウトのプラットフォームを共有していることからも分かるように、わざわざFRレイアウトのプラットフォームを作るというのは非常にコストがかかってしまう。その専用FRプラットフォームを採用したモデルがN-BOXのようにバカ売れすればいいのだろうが、室内空間で劣るFRレイアウトの車両がそこまで売れるとは残念ながら思えない。
なお、ミッドシップレイアウトとなるS660は、N-BOX系のパワートレインを流用することでコストを抑えている。FRレイアウトであればドライプシャフトなどの駆動系パーツが新たに必要になるが、ミッドシップレイアウトならばFF車のパワートレインをミッドシップに搭載することができるため、コストダウンにつながるというワケである。
ちなみにエブリイやハイゼットといったキャブオーバータイプの軽1ボックスも厳密に言えばFRレイアウトと言えるが、商用車としてかなりの台数が捌ける(OEM供給も含めればさらにだ)上に、モデルライフも通常の軽乗用車よりも長いために成せる技、ということが言えるだろう。