2リッター以下は急に「小刻み」! 「1.2」「1.3」「1.4」などエンジン排気量が多数用意されるワケ (2/2ページ)

車格やニーズに合わせた目標トルク値が異なるため細分化される

 それはさておき、2.0リッター以下の排気量において細かく刻んでいることが多い理由は、車両設計的にいうと、そのクルマに必要な力が異なるからだろう。エンジンスペックでいうと最大トルクのターゲットが異なってくる。NA(自然吸気)を前提にすると、トルクというのは排気量に比例するといっても過言ではない。市販車のデータから逆算した目安でいうと100ccごとに10N・mのトルクを出せるといえる。そうなると、乗車定員を含めた重量とトランスミッションなどの要素から、180N・m程度の最大トルクが欲しいとなれば、エンジン排気量は1.8リッターにすることになる。逆に、130N・m程度で十分となれば1.3リッターのエンジンを搭載すると判断されるというわけだ。

 大は小を兼ねるとはいうが、大きなエンジンは重くなってしまいがちであるし、生産コストも上がる。さらに、冒頭で書いたように排気量が小さいほうが税制的に有利なことが多い。ある程度の数を作る量産車であれば、車両ごとに必要なトルクを出せる、最適な排気量のエンジンが必要になる。そのため小排気量では100cc刻みとなっていることが多いと考えるのが妥当だろう。

 もちろん、車両ごとに欲するトルクというのは大排気量になっても変わらないが、小排気量車に比べると、そこまでコストがシビアでないこともあって、500cc刻みでも十分に市場ニーズにマッチさせられるといえる。もっとも、2.5リッター以下では100cc刻みになっていることもあったが……。

 ところで、近年ではダウンサイジングターボが増えているが、ターボのような過給エンジンの場合、過給圧の設定によっていくらでも最大トルクをコントロールできる。そのため排気量を細かく変えたエンジンを設計するのではなく、同じ排気量のままエンジンの制御違いによって目標のトルクに合わせるというアプローチが増えてきている。また、前述したように、燃費や排ガスに厳しい要求性能を課せられる現在のエンジン開発においては、特定の排気量でシミュレーションを重ねて詰めていくほうが有利というのも影響しているだろう。

 まとめると、小排気量エンジン車において、排気量の刻みが細かくなっているのは、それぞれの車格やニーズに合わせた目標トルク値が異なるからといえる。ただし、ダウンサイジングターボの広がりにより、排気量は変えずに制御で目標トルクを実現するという風になっている。さらに電動化によってモーターとエンジンのシステムトルクで考えたり、そもそもトルクの出方に有利なモーター駆動が増えてくると、こうした考え方もどんどん変わっていくだろう。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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