本当の改善策は免許を取りやすくすることではない!
「若年層から積極的に乗務員を集めようというのが法改正の背景にはありますが、そもそも若年層は、第一種免許すら保有していないという人も少なくありません。そして若年ドライバーは年配ドライバーよりも運転操作がアグレッシブなことが多いので、事故発生率が高いとも聞きます。また、社会人経験が浅いので、多種多様な乗客に対して接客が十分できずにクレームにもなりやすいなどのリスクも高いともいわれています。しかし、それより……」と、業界事情通がさらに続けた。
「隔日勤務(連続19~21時間ほどの勤務)ならば、新型コロナウイルス感染拡大が起きていないような平常時では、月に12から13出番(タクシーに乗ることができる回数)あります。ただ、基本的には同じことを繰り返すだけですので、若いうちから始めて長い間続くのかという不安があります。また、たとえば4年制大学を卒業してすぐに乗務員となれば、その時点では稼ぎ方次第ですが、同期で一般企業に就職した人より乗務員のほうが収入は良いでしょうが、その後はサラリーマンのような定期昇給はないので、一定年齢で立場が逆転することにもなるでしょう。さらには、乗務員をやめ、異業種に転職しようとしても、前職が乗務員(とくにタクシー)だと選考時点で不利になるともいわれています。若い人を多く乗務員として採用できたとしても、結果的に長続きしなければ、“第二種免許を持っているだけの人”を増やすだけになるという不安もあります」と話してくれた。
タクシー事業者としては、いままでのように異業種経験がある人を採用すると、なまじ社会人経験があるだけに、スムースな労務管理ができないこともよくある。そこで、社会人経験がなく、世間に染まっていない学卒者の採用を積極化するという気持ちもわからないではないが、根本的に魅力ある職業でなければ、思うように人が集まらなかったり、どの世代の人を雇おうが長続きしないなど、乗務員不足を解決に向かわせることは難しいといえるだろう。