STIスポーツのほうがロードノイズが気にならない
また、STI Sportならではの機能として、ドライブモードセレクトがある。コンフォート、ノーマル、スポーツ、スポーツ+、インディビジュアルの5つのモードが切り替えられ、パワーユニット、ステアリング、電子制御可変ダンパー、エアコンに至るまで、可変できるのだ(インディビジュアルならすべての項目を自分好みにセットできる)。しかも、その可変幅が確実かつ明確で、コンフォートなら高級サルーンの乗り味に。スポーツなら硬派なスポーツカーのドライブフィールに大変身。「なんとなく変わったかも」というドライブモード機能のクルマもあるなかで、新型レヴォーグのドライブモードセレクトは間違いなく使える機能だと思えた。
途中、関越自動車道上のパーキングエリアで、STI Sport EXからGT-H EXに乗り換える。すると、タイヤサイズはまったく同じなのに、ステアリングレスポンス、ロードノイズに、STI Sportとの違いが見られた。ステアリングレスポンスに関しては、STI Sportはステアリングセンターから切込む際、「遊び」ゼロの精度感で精密にレスポンスし、ノーズの向きを気持ちよくリニアに変えてくれるのに対して、GT系はやや「遊び」があってからレスポンスしてくれるという違いがある。また、ロードノイズも、同サイズ、動銘柄のタイヤにして、STI Sportのほうが圧倒的に気にならなかったのである。
その理由は、先に触れたドライブモードセレクトと、サスペンションにある。まずステアリングレスポンスについては、STI SportはZF製の電子制御可変ダンパー、それ以外のグレードはカヤバ製のコンベンショナルなダンパーを用いているのだ。電子制御可変ダンパーのほうは、ドライブモードでダンピングを3段階に変更できるだけでなく、ステアリングの切り角、路面からの入力、Gなどを検知した瞬間に4輪を瞬時に電子制御=アダプティブ制御。結果、乗り心地はもちろん、パワーステアリングそのものの制御の違いによって、元々、操舵力がやや重めでセンターがよりしっかりしているSTI Sportは、ステアリングレスポンスが瞬時に立ち上がり、また、安定感、直進感の良さを、かなりハイレベルなところで、さらにワンランク高めているというわけだ。
では、STI Sportのほうが優れていると、さまざまな路面で感じさせてくれたロードノイズの差はどこにあるのか。じつは、標準系サスペンションはゴムブッシュとスチールハウジングを用いているのだが、ZF製の電子制御可変ダンパーを使うSTI Sportのほうは、可変幅の広さによる、低速域で路面から入ってきやすい高周波のノイズをカットすべく、ウレタンブッシュとアルミハウジングを奢っているのだ。それがロードノイズ性能の差になって現れていたのだ。
上信越道・碓井軽井沢ICからはプリンス通りに至る、延々と続くワインディングロードとなる。そこでは、新型レヴォーグの盛り上がるパワー、シャープでリニアさ極まるステアリング、引き締まった足まわりによって、登坂路をぐいぐいと余裕たっぷりに上っていく。まさに真正AWDスポーツワゴンそのものの、上質でハイレベルかつ意のままの操縦感覚、回頭感、まるで路面をなめるような安定感、低重心感たっぷりのスポーティな操縦性の気持ち良さ、そしてフラット極まる乗り心地を堪能することができたのだ。
水平対向エンジンが先代より40mm後方=車体中心寄りにレイアウトされていることも忘れてはならず、それが回頭性の良さを高めている要因とも考えられる。しかも、エンジンを高回転まで回すシーンでも、車内は終始、静かそのもの。後席乗員との会話も用意で、それこそ寝ている乗員やペットを起こすこともないかもしれない(あくまで運転の仕方によりますが)。