ポルシェのレーシングカーは公道も難なく走れるほど快適
次にお薦めしたいのはポルシェ911。新車も中古車も今や空前の高値となり、フェラーリ同様に一般人には手が届かない夢のクルマになってしまった。
レーシングドライバーとしてポルシェのレーシングカーを操った経験から、レーンシュポルト(レーシングスポーツ)の精神が宿る911の虜となってしまったレーサーは数多い。僕が最初に操ったレーシングポルシェはグループCの962Cだった。1989年全日本耐久選手権でデビューウィンを飾り、その1カ月後にはル・マン24時間レースを走った。約6kmにおよぶ長い直線のユーノディエールがあった最後の年のル・マンで、僕の搭乗したブルンポルシェ962Cは375km/hの最高速を記録したのだが、そのときの高速直進性の高さと静粛性、快適性には大きな感妙を受けた。
24時間を闘うためにはドライバーのストレスを軽減させ、正確なドライビングに集中させなければならない。レーシングポルシェの開発理念は根性で我慢を強いる国産のレーシングカーとはかけ離れたものだったのだ。962Cの快適性はそのまま乗用として使えるのではという錯覚すら覚えた。実際にオーストラリアのバーン・シュパン選手は自らのネーミングを冠したシュパン・ポルシェを962Cベースで製作しロードカーとして販売したのだ。
911は962Cやさまざまなレーシングポルシェの技術とノウハウ、部品も共用し、それを市販モデルからも感じさせてくれる稀少な存在となっていたのだ。現代はSUVのカイエンやマカン、スポーツセダンのパナメーラやEVのタイカンもポルシェブランドとして存在するが、レーンシュポルトを感じさせてくれるのは911に勝るものはない。一生に一度は911に乗ってほしいのだ。