パトカーやタクシー車両の終了からクラウン勇退の予感
パトカーについては9代目以降も、クラウンベースで設定されていた。先代となる14代目では、パトカーは設定されないとの噂も流れながら、結局設定されたのだが、現行モデルとなる15代目ではいよいよパトカーは設定されないとの情報が有力となってきた。
初代モデルのころから設定されていたが、単に初代クラウンをパトカーにしたのではなく、トラック用直6エンジンを搭載するために、エンジンルームを長くした、初代クラウン風パトカー専用車、トヨタ・パトロール(クラウンはトヨペット・クラウンだったが、パトロールはトヨタだった)であったのだ。
その後、日本のパトカー規格はクラウンありきで、時代の変化に対応してきたのだが、クラウンベースのパトカーは15代目ベースでは拝むことはできそうにない。アメリカでもいまや多くの地域で、シボレー・タホや、フォード・エクスプローラーといったSUVベースのポリスカーを使っているので、セダンである必要もないのかもしれない。今後仮にクラウンベースのパトカーがなくなったとしたら、日本のパトカー規格も大きな岐路に立たされることになりそうだ。
そして、名前だけとなるがクラウンと名乗っていたクラウンコンフォートとクラウンセダンも2018年で生産終了となり、長きにわたり日本のタクシー車両として活躍していたクラウン系タクシー車両はついに完全に消えることになった。
日本を代表する高級セダンとなったクラウンは、パトカーやタクシーなど、ハードユースされる業務車両があってこそ、65年の間耐久性能や快適性を向上させ続け、その地位を不動のものにしてきた。しかし、タクシー、パトカーと相次いでクラウンベースのものが生産終了したり、モデルチェンジするたびに、「パトカーはあるのかないのか」といった話が盛り上がるようになってきた今の状況を考えると、クラウン自体もそろそろ引退のタイミングを見計らっているのかなと、筆者はその様子を見ていた。
世界的にユーザーの高齢化の目立つトヨタだが、日本ではその傾向はより顕著だ。長い間トヨタ車を乗り続けていたお得意様の免許返納などにより、顧客のなかでマイカー自体を持たなくなるケースが多くなり、販売現場では困惑しているとも聞く。もし、クラウンが生産終了となれば、それは筆者のようなオジさん世代には、残念なことであるが、ユーザーの若返りをはかる意味では、必要なことなのかもしれない。
新型コロナウイルス感染拡大が始まる前には、“自動車は100年に1度の変革期を迎えている”などと、よくいわれていた。そのようなタイミングでクラウンの勇退話が出てきている。そしてトヨタがクラウンの生産終了を決めれば、それは100年に1度の変革期に挑む、トヨタの決意表明となるのかもしれない。