「リコール」は「欠陥品」を作ったメーカーのミスではない! よりよい「モノ作り」を行うための制度だった (2/2ページ)

保安基準に適合しない可能性がある段階で早めに対応している

 では、どういう仕組みでリコールの対象が決まるのか?

 まず、クルマの不具合に関する情報として、警視庁・消防庁・JAF等の関係機関、自動車メーカー・装置(部品)メーカーによる自社調査、また365日24時間受付している国の”自動車不具合ホットライン”へ寄せられるユーザーの声などが、国土交通省・自動車局・審査リコール課に届く。

 その一部は、国土交通省で精査された情報をもとに、同省が所管する交通安全環境研究所で技術検証を実施する。

 そうした裏付けを経て、国土交通省は自動車メーカー・装置(部品)メーカーに対してリコール勧告や命令を出し、自動車メーカー・装置(部品)メーカーはリコールの届出を行う。

 このリコールの技術検証が正式に始まったのは、平成18年5月と比較的、日が浅い。

 きっかけとなったのは、平成16年5月に発覚した、三菱ふそうの大型車のはずのリコールの虚偽報告だ。この事案をベースに小説化されテレビ番組にもなった。

 こうした虚偽報告や偽装は、六本木での大型回転ドア事故、温泉に入浴剤を混ぜた事件、またマンションの耐震性に対する構造計算書についてなど、平成16~17年にかけて大きな社会問題化した。

 このタイミングで、国は自動車のリコールに対する不正行為再発防止策をまとめ、また関連して平成18年5月には道路運送車両法が一部改正された。

 近年では、自動車メーカーのみならず、企業はコンプライアンスについて真剣に取り組むようになっており、リコール不正は滅多に起こらなくなった印象がある。

 見方をかえると、近年のリコールは、企業がコンプライアンスを明確にするため、保安基準に適合しなくなる可能性が少しでも分かった段階で、早めの対応をするようになったといえる。

 リコール制度とは、単にメーカーのミスを洗い出すのではなく、メーカーに対するより良いモノづくりの下支えになるべきだと思う。


桃田健史 MOMOTA KENJI

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