コロナ禍の影響で従来の営業方法が通用しなくなってきた
タクシー運転士ならば、誰でもワンメーターを嫌がるかと思えば、そうでもない。筆者が体験したように、ロングが期待できるタクシー乗り場で客待ちしている運転士は、ワンメーターで嫌味を言ったりすることが多いといえよう。利用する側としては、そのようなことは関係ないので、理不尽な話ともいえるが、嫌な思いをしたくなければワンメーターぐらいの短い利用ならば、道路を流している“流し”のタクシーに乗ったほうが、嫌な思いをする確率はグーンと減るだろう。
街なかを丹念に流す運転士は、利用距離ではなく“利用客のつながり”を重視する傾向がある。お客を降ろした、その瞬間、その場で新しいお客が乗り込んでもらえると、空車で流すことがないので、効率的で理想的な営業と捉えている。その場でなくても、お客を降ろして発車してすぐに手を挙げられる、このようなシチュエーションが続けば、ロングよりも効率的に稼ぐことも可能なのである。ロングの場合は長距離なので、利用料金は高いが、渋滞などに巻き込まれれば。時間ばかりかかって、かえって効率が悪いこともある。
東京23区及び武三地域では、初乗り距離を短くし、初乗り運賃(ワンメーター)を下げて、短い距離でも手軽に利用してもらえるようにしている。近距離移動客を増やすというよりは、ワンメーター以上の利用では、事実上の“値上げ”のようなことにもなりかねないので、導入当初は「お客さん、いままではここまでいくらできていましたが?」と、旧料金から上がっているかどうかを確認する運転士が多かった。
ワンメーター利用客に嫌味を言ったりするのはもちろん許されるべきものではない。ただ、運転士個々で営業スタイルは異なり、運転士すべてがワンメーター利用を嫌がっているわけでもない。「いまは深夜でも1000円程度の利用ばかりが続きます(しかも利用者は減少傾向)。新型コロナウイルス感染拡大以降は、接待は多くの企業などで禁止されていますし、ロングはまず期待できません。深夜にロング客を乗せて最終的に売り上げをよくするというスタイルは通用しなくなってきています。そのような状況を見ると、ワンメーター利用で嫌な顔をされるといったことは、より減少傾向になっていくのではないでしょうか」とは、業界事情通の話だ。