クルマの値上げと所得の伸び悩みがコンパクト人気を押し上げた
日本ではコンパクトな車種の人気が高い。もっとも販売比率が高いのは軽自動車で、新車として売られるクルマの約37%を占める。その次に好調なのがコンパクトカー(5ナンバー車を中心とするコンパクトなハッチバック)で、国内の販売比率は約25%だ。
そしてSUVやミニバンでも、好調に売れるのはボディの小さな車種になる。2020年9/10月における国内販売ランキングを見ると、小型/普通車の上位には、コンパクトカーではトヨタ・ヤリス、トヨタ・ルーミー、ホンダ・フィット。コンパクトSUVではトヨタ・ライズ、順位は少し下がるがコンパクトミニバンではホンダ・フリードとトヨタ・シエンタが入った。
これらのうち、登録台数の1位はヤリスで、10月は1万8592台とされるが、このなかには約6900台のヤリスクロスも含まれる。この台数を差し引いたヤリス(GRヤリスを含む)のみの登録台数は約1万1700台だから、小型/普通車の実質的な販売1位は1万3256台のライズだ。
日産ノートはフルモデルチェンジを控えて直近では売れ行きを下げたが、2020年の前半は新型車のヤリスやフィットに次いで好調に売れていた。フルモデルチェンジを受けると、再び販売ランキングの上位に入る可能性が高い。
コンパクトカーが好調に売れる理由をトヨタの販売店にたずねると、以下のような返答だった。「ヤリスが好調に売れる一番の理由は、運転しやすいコンパクトカーでありながら、安全装備が最先端になることです。ハイブリッドの燃費も抜群に優れ、お客様のニーズに応えたクルマづくりで売れています」。
ヤリスの衝突被害軽減ブレーキは、歩行者や車両に加えて自転車も検知する。自車が右左折するときも、直進してくる車両や横断歩道上の歩行者を検知して、衝突被害軽減ブレーキを作動させる。ハイブリッドGのWLTCモード燃費は、2WDなら35.8km/Lだから、国産の小型/普通乗用車では最良の数値だ。
しかも2020年5月以降は、全国的にトヨタの全店が全車を販売する体制に移行した。ヤリスが発売されたときの取り扱いディーラーはネッツトヨタ店のみだから店舗数も約1450箇所だったが、今はトヨタ全店の4600箇所に急増した。販売網が3倍以上に充実したことも、ヤリスが好調に売れる理由だ。