ナイトロシステム搭載の市販車が生まれる可能性はゼロに近い
さらに亜酸化窒素はエンジンに吸い込まれると窒素と酸素に分離する。この酸素もシリンダー内でガソリンと反応して燃焼する。こうして酸素量を倍増させることで、瞬間的に圧倒的なパワーアップを実現することができる。
もちろん、そのためには酸素を増量したのに見合うだけのガソリンを供給する必要がある。つまり、ノーマルエンジンに「ナイトロ噴射システム」を追加しただけでは、期待するほどのパワーアップもできず、かえってエンジンを壊してしまう原因となる。ナイトロシステムを装着するのであれば、適切な燃料増量チューニングをセットで施す必要があるのだ。
さらにナイトロシステムで使用する液化した亜酸化窒素は適宜、充填する必要がある。装着すれば終わりではないのだ。しかも、亜酸化窒素の充填コストはタンクのサイズにもよるが、おおよそのイメージとして1万円~3万円は必要となる。
パワーアップの代償としてランニングコストは上がってしまう。もっともナイトロシステムを使わずにパワーアップしようと思うと、さらにチューニングコストが必要となることが多く、亜酸化窒素の充填を考慮してもコストパフォーマンスが高いともいえる。
さらに映画の中では、走行前にガスを放出する「パージバルブ」と呼ばれるガス抜きが必要となるが、亜酸化窒素は温室効果ガスの一種であり、環境問題からCO2排出量を減らそうという時代において、こうした行為は少なくともメーカーが行なうことは許さないだろう。
というわけで、ランニングコストや耐久性、環境負荷を考えるとナイトロシステムを市販車に採用するというのは現実的ではない。つまり、ナイトロシステム搭載の市販車が生まれる可能性は限りなくゼロに近いのだ。