ランエボ復活を望む現場の声も多いという
しかし2015年以降の三菱は、セダンやクーペをベースにしたスポーツモデルから撤退している。今の国内で売られる三菱車には、スポーツモデルだけでなく、セダン/ワゴン/クーペも用意されない。
車種を減らした目的は、商品開発の集中で効率化を図ることだ。三菱は、コロナ禍の影響を受ける前は、世界生産台数の26%をタイ、14%をインドネシア、8%を中国が受け持っていた。アセアン(東南アジア諸国連合)地域で強いメーカーだから、商品開発もこの市場に焦点を合わせた。
その結果、優先順位としては悪路向けを含めたSUV、ピックアップトラック、多人数乗車の可能なMPV(マルチ・パーパス・ビークル/多目的車)が高まっている。とくにSUVは、日本と海外の両市場で人気が高く、三菱がジープやパジェロの時代から手掛けてきたカテゴリーでもある。4WDや4輪制御技術の強みも発揮させやすい。
つまり今の三菱にとって、SUVが世界的に注目される状況は、売れ行きとブランドイメージを伸ばす絶好のチャンスだ。三菱の「2020-2022年度中期経営計画」を見ても、次期型のアウトランダー/パジェロスポーツ/エクスパンダー/トライトンが計画され、市場はアセアン、カテゴリーはSUVという組み合わせになる。
スポーツモデルについても、4輪制御技術を駆使したエクリプス クロスPHEVなどのSUVで進める計画だ。三菱は2030年に電動車(PHEVなどを含む)の比率を50%に高める計画だから、開発投資も増えるため、商品のカテゴリーはSUVなどに集中させる。
この方針は理解できるが、GTOやランサーエボリューションを知る世代としては少し寂しい。三菱の販売店でユーザーの反応を尋ねた。「ランサーエボリューションは今でもファンが多く、新型が発売されたら即座に乗り替える心積りのお客様も少なくありません。新型が登場すれば嬉しいですが、今はSUVと軽自動車をしっかり売ることが大切でしょう。それでもエクリプス クロスのエボリューションが欲しいという声は聞かれます」。
今の状態が続くと、ランサーエボリューションのユーザーがスバルのWRXに乗り替えるなど、顧客の流出も心配されるだろう。ランサーエボリューションの復活は困難としても、エクリプス クロスにローダウンサスペンションを組み込んだエボリューションを用意するなど、スポーツモデルの復活に向けたファイティングポーズを見せてほしい。