ネガティブ要素は解消されつつある!
またクルマのハイパワー化が進むと、4WDのトラクションキャパシティが乾燥舗装路でも有効に作用し、三菱・ランサーエボリューション(ランエボ)やスバル・インプレッサなどスポーツ系モデルにはフルタイム4WDが不可欠な装備となる。
センターデフを装備していても、FFベースかFRベースかなどによってハンドリング特性が異なることもわかるようになってくる。
FFベースでは重たいエンジンの下にある駆動前輪にまずパワーが伝わり、駆動力として前輪のグリップを消費する。そのため旋回に必要なコーナリングフォースが減少してしまい、アンダーステアを発しやすい。現在も4WDは曲がりにくいと思っている多くのユーザーはこの現象を感じ取っているからだろう。
FRベースでも理屈は同じで、操舵前輪に駆動力がかかるだけでステアリングレスポンスが低下し旋回力が劣ると感じるようになるのである。そこで、前後の駆動力配分システムが考案される。前後の駆動力配分を40:60などに設定することで前輪操舵時にパワーをかけてもコーナリングフォースを発生しやすくするのが狙い。最大前後0:100で設定すれば転舵中は後輪駆動として旋回特性を高め、ステアリングを直進方向へ戻すに従い駆動力をかけていくシステムもある。
近年では500馬力を超えるようなハイパワー車は、ほとんどが4WDシステムを採用しており、その有効性は疑いの余地がない。もしF1のレギュレーションが自由なら各チームとも4WDシステムを採用するだろう。
さらに三菱自動車がランエボで開発したAYC(アクティブヨーコントロール)システムのように駆動力を左右輪でコントロールしたり、AMG GTやランボルギーニ、ポルシェ911ターボなども採用している4WS(4輪操舵システム)の有効性も実用領域に達している。これらをすべて理想的にコントロールできれば「4WDは曲がらない」といった概念は遥か遠い昔のことと思えるようになるはずだ。