ヨンクは「曲がらない」「燃費が悪い」は過去の話! スーパーカーが続々採用するイマドキの4WD事情とは (1/2ページ)

アウディ・クワトロが4WDに革命をもたらした

 古い人はいまだに4輪駆動車(4WD)というと「曲がらない」「燃費悪い」という印象を拭えていないらしい。確かに1980年にアウディ・クワトロが登場する以前の4WD車は曲がりにくく、走行燃費も悪かった。アウディ・クワトロはいかにして4WDの難題をクリアしたのか。

 まずは4輪駆動が曲がり辛いというメカニズムを検証してみよう。アウディ・クワトロ以前の乗用4WDといえばスバル・レオーネや三菱パジェロなどで、普段はFFの前輪2輪駆動であったりFRの後輪2輪駆動で必要に応じて前後のアクスルを繋ぐトランスファーギヤを操作して4WDとするパートタイム方式がほとんどだった。前後のアクスルが機械的に連結されるので、全輪に駆動力をかけられる4WDとなるのだ。

 だが、自動車が旋回しようとすると、まず車輪の内外輪に内輪差が生じる。さらに前後車輪間でも旋回半径に応じた回転差が生じる。内輪差は通常のFFやFRなどの2輪駆動車でも発生しているわけだが、デファレンシャル機構(デフ・作動差装置)が機能してスムースに旋回できる仕組みとなっているのだ。

 パートタイム方式の4WD車も前後アクスルにはデフを備えており、左右間の内輪差はうまく吸収できるのだが、前後の車軸間の回転数差を吸収する仕組みがなかった。前輪の外輪と後輪の内輪で回転数差はもっとも大きくなり、その差をスムースに吸収する必要があったわけだ。

 そこで前後アクスル間にもデフを配置し、センターデフとして機能させることで前後車軸間の回転数差をスムースに吸収する仕組みを取り入れたのがアウディのクワトロシステムなのだ。クワトロシステムの登場で、4WDは滑りやすいオフロード専用のシステムではなくなった。

 またパートタイム方式では乾燥舗装路を旋回中の車輪間回転数差をパワーで押し切り、タイヤをスキッドさせて力づくで旋回させるため、エンジン出力を擁し燃料を多く消費していたが、クワトロシステムでは舗装路でもスムースに旋回でき、普通に使用できるフルタイム4WDとして技術確立されたのだ。

 クワトロシステムでセンターデフ方式の優位性が実証されると、各社一斉にセンターデフ方式を採用するようになる。悪路では圧倒的な駆動力が確保でき、舗装路での旋回もスムースに行えるので、とくに山岳部や降雪地のユーザーに支持される。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
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クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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