排出ガス対策をクリアするとオープンカーが再注目された
かつては、何車種か作られていたのに、最近あまり見かけなくなったモデルにオープンカーがある。屋根のない、文字どおりオープンエアモータリングを満喫できるオープンカーだが、趣味性の要素が強く、実用性、耐候性などを総合的に考えると、特定少数のユーザーしか対象とならず、需要の絶対数が限られるモデルだ。
しかし、日本のモータリゼーションを振り返ってみると、まだ自動車が普及途上の昭和高度成長時代、言い換えれば自動車が実用の域を出ていなかった時代に、すでにオープンカーは作られていた。それもふたつのタイプが作り分けられていた。
ひとつは、走りに特化した性能、性格を持つスポーツカーだ。日産フェアレディ(SP/SR)やホンダS600/S800がその代表例である。そしてもうひとつが、トヨタ・パブリカ・コンバーチブルや日産スカイラインスポーツ・コンバーチブル、ダイハツ・コンパーノ・スパイダーといった乗用車から屋根を取り払った(開閉式とした)モデルである。
オープンカー自体は珍しい存在で、1970年頃を境にいったん姿を消すが、厳しかった排出ガス対策をクリアし、再び性能競争が激化する環境となった1980年代、多様なユーザーニーズに応えるかたちで車種が多様化するなか、再びオープンカーが注目されることになる。今回は、いくつか登場したオープンカーのなかから、とくに特徴的だった珍しいモデルを振り返ってみたい。
オープンカー再来の口火を切ったのは1984年のホンダ・シティカブリオレで、前後にブリスターフェンダーをもつシティターボIIの外観を使う4シーターオープンとして登場した。エンジンは自然吸気のSOHC1.2リッター(67馬力)と、動力性能、運動性能はそれほど考慮せず、あくまでオープンエアモータリングを重視する車両性格だった。このシティカブリオレは、久々に復活したオープンモデルということも手伝って、それなりの販売実績を残すことに成功した。
このシティカブオリオレと同じ手法で作られたオープンカーが、1986年に登場したマツダ・ファミリアコンバーチブル(BF型)だった。2ボックスハッチバックからルーフを取り去り、手動開閉式のソフトトップによるオープン構造を採用、転倒時の安全確保のためロールバーを備える点もシティと同じだった。
異なるのは搭載エンジンの性格で、前期型では1.5リッターSOHCターボ(115馬力)、後期型では1.6リッター4バルブDOHC(110馬力)といずれも比較的ハイパワー系のエンジンを搭載した。これはオープン化のため補強で増えた車両重量への対応策だった。
開放感を満喫するオープンカーながら、強烈なエンジンと組み合わせたモデルが1987年に登場した。動力性能、運動性能で国内トップレベルにあったマツダRX-7(FC型)のオープンモデルである。ロータリーエンジン誕生20周年を記念して作られたモデルで、パワーユニットはクーペRX-7と同じ205馬力の13B型ターボエンジンを搭載。付加価値を高めるためソフトトップは電動開閉式を採用。決してマイルドな性格ではなく、超快足オープンカーとして特異な存在のモデルだった。