オシャレとエコ極まれり! EVのロンドンタクシーTXが「運転」しても「乗客」でも楽しかった【試乗】 (3/3ページ)

対面6座のシートを広大な室内に配置

 では、本来のインプレッション!? である後席に乗ってみよう。運転席と比べ乗降性の良さは大違い。最小限の足の持ち上げ量で、スッと頭を大きくかがめずに乗り込める。自動ドアではありませんが……。

 前向き3座のシートは、フロアから高めにセットされ、いす感覚のかけ心地。3座どこに座っても、タクシーとして快適感あるかけ心地に差はなし。中央席がハズレ席ではないのである。しかも、ガラスのスカイルーフ付きで、まさに乗っているだけで観光気分になれるところもうれしいポイント。東京なら、スカイツリーや東京タワーを見上げながらの移動も可能になるということだ。後席左右にはUSBソケットも完備され、スマートフォンの充電にも対応する。

 6座のシートは、ソーシャルディスタンスにもうってつけだ。2名乗車なら前向きシートの両端に座ればいいし、3名乗車なら前向きシート両端&後ろ向きシートの中央に座れば、対面しない三角形のフォーメーションになるではないか。

 そうそう、広大な室内空間、運転席とのパーテーションによって、運転手と乗員の距離、会話は遠いのだが、そこは歴史ある百戦錬磨のロンドンタクシー、しっかり双方の会話を容易にするマイクとスピーカーを前後席に完備。飛沫を心配せず!? 会話ができる。

 ここでひとつ、ロンドンタクシーTXのドライバーに注文がある。一般的な日本のタクシーと違い、後席乗員は、アシストグリップや前席をつかめないため、カーブなどでは一段とジェントルな運転を心がけていただきたい。とくに後席中央席には、シートベルト以外、まったく体を保持するすべがないからである。

 そんなロンドンタクシーTXは、時代が求める、電欠の心配がない(ガソリンが入っている限り)レンジエクステンダーの電動タクシーであると同時に、ユニバーサルデザイン、そしてソーシャルディスタンスカーとしての側面を持っていると感じた。

 最後に価格だが、1120万円と高価(もちろん補助金あり)。プライベートカーとしてはもちろん、ハイヤー事業者でもなかなか手を出しにくい価格だが(リヤドアが自動ドアではないので日本でタクシーとして使うのは難しい)、ちょっとシャレた送迎車、イベントカー、そして観光用の(イギリスからの観光客は喜ばないかも)多人数乗用車的使い方ならハマると思える。いずれの用途でも、車いす対応というのが見逃せないポイントではないだろうか。なお、充電口はフロントにCHAdeMO対応を含め2種類あり、リチウムイオンバッテリーの寿命は100万kmということだから頼もしい。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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