魅力や個性を押し出せずにひっそりと消えてしまったモデルも存在
5)ホンダ・ジェイド
ホンダが昔から得意とするロールーフの小型ワゴンも、ついに系譜が途絶えた。ストリームや昔のオデッセイほどのインパクトの強さはなかったものの、走りの質の高さでは玄人筋からの評価が高かった小型ワゴンで、ハイブリッドや運転支援システムのHonda SENSINGといった今の時代に求められる装備や性能もしっかり備えるなど、地味ながら総合力の高い力作と言えたが、突出した個性には乏しく完全に埋没。ホンダのラインアップ内でも、より小型のフィットやN-BOX、SUVのヴェゼルなどにはない魅力や個性を押し出せなかった。
6)マツダ・ベリーサ
2代目デミオをベースに外装デザインの個性を強め、内装の上質化をはかったスペシャリティ要素の高いコンパクトカー。モデルチェンジを繰り返すデミオを横目に内外装のリファインのみで延命をはかったが、意外に一定以上の販売台数をキープ。気がつけば12年もの長きに渡り販売され続けたロングセラー車となった。軽くてシンプルなメカを搭載するという、旧世代のコンパクトカーならではの魅力は時代を経てもあまり色褪せず、外装デザインに力を入れて開発したこともあって、時を経るごとにより個性を強めた結果、思わぬご長寿モデルとなった。
7)スズキ・バレーノ
インドでトップシェアを誇るスズキのインド製世界グローバルモデル。プラットフォームやパワートレインはスズキの最先端技術が盛り込まれており、総合的な性能は意外とハイレベルだった。品質面でインド生産車特有のネガがあったわけでもない。世界グローバル販売車ということでボディの全幅がやや広く、日本のコンパクトカーとしては比較的ワイドなトレッド幅がもたらすコーナリング性能の高さなど、同門のスイフトにはない魅力も備えていた。
残念ながら日本市場ではスイフトを差し置いてまでバレーノを選ぶユーザーはほとんどいなかったため販売を終了したが、「キザシ」と並ぶレアな存在として、一部のクルマ好きは街で見かけると強く反応する。
8)スバル・ディアスワゴン
名車の誉れが高い旧サンバー時代に生まれたSUBARUのワンボックス軽自動車の上質モデル。SUBARUが軽自動車の自社開発・自社生産をやめてからはダイハツ・アトレーワゴンのOEM車として車名は存続したが、ダイハツ・タントのOEM車であるシフォンがあればラインアップ的にはこと足りるため、世間がコロナ危機に見舞われた今年3月にひっそりと消滅。SUBARU製の旧サンバーと異なり、SUBARUファンからあまり愛されることなく役目を終えるという、じつに寂しい幕切れであった。