アナウンスもないけど買えないの? 最近ひっそり消えていった悲しいクルマ8選 (1/2ページ)

クルマの品質としては高かったが人気が出なかった悲しいモデルも

 誕生するクルマがあれば、消えゆくクルマもある。EJ20エンジンを搭載したスバルWRX STIはファイナルエディションという限定車を最後に発売し、倍率23倍強の超大人気を博すなど、多くのクルマ好きから惜しまれて退役したが、それは極めて稀なケースと言える。販売が終了するのは不人気が原因なので、あまり惜しまれることもなく、ひっそりと消えていくクルマの方がはるかに多いものだ。プロ野球選手でも、派手な引退試合をしてもらえるのはごく限られた選手のみで、大半の選手はコアなファン以外からはほとんど注目されることなく引退する。

 ここでは、比較的最近になってひっそりと消えていった悲しいクルマを8台ピックアップ。惜しむべき魅力や個性を思い出しながら、その存在を偲んでみたい。

1)トヨタiQ

 欧州市場のAセグメント車として入魂開発されただけあって、ボディ剛性の高さは日本メーカーのコンパクトカーの基準を超えたレベルに高められたなど、かなりの入魂設計だった。2008年デビューのマイクロカーながらMTは6速で、その操作フィールは欧州のコンパクトカー並みかそれ以上に秀逸。

 運動性能や衝突安全性も当時の国産小型車としては群を抜いており、自動車評論家のこもだきよしさんが娘さん用に購入するなど、玄人筋からの評価は高かった。残念ながら日本の小型車市場は背高トール系が全盛時代を迎え、実質ふたり乗りのiQは受け入れられなかったが、欧州市場では地味に売れ続け、日本でも意外と延命して2016年まで販売された。

2)日産キューブ

 2代目モデルからコンセプトを変更し、大胆で個性的な内外装デザインを採用したり、室内の装備は若者ユーザーの利便性を徹底追求して開発するなど、旧来の日本のコンパクトカーにはなかった遊び心が満載で、踏み込んだ商品性の高さを誇った。トールワゴン全盛時代の波にも乗り、2代目モデルのキープコンセプト版として誕生した3代目も一定以上の人気を博し続ける。

 2008年のデビュー以来、内外装のリファインを繰り返すだけで12年もの長きに渡り販売されたが、最後まで古臭さをあまり感じさせることがなかったなど、デザイン性の高さは再評価に値する。元AUTECHレースクイーンとして知られる人気モデル、美波千夏さんも長らく愛車として乗り続けたなど、女性からの支持も高かった。

3)日産ジューク

 エッジの効いた先鋭的なデザインや、軽快で硬質な走りでデビュー当初は高い人気を博したSUV。いわゆるゆとり世代の、さらに次世代にあたる「ゆとり第二世代」と呼ばれた90年代生まれの若者からも注目されるなど、若者のクルマ離れを多少なりとも食い止める功績を残したと言える。

 物心ついたときからミニバンに慣れ親しんで育った若者層からも不満の出ない居住性や、高すぎず、低すぎない車高による絶妙な乗降性の良さなど、地味な美点は枚挙にいとまがない。SUVとコンパクトカーの中間的な車格で、高性能版のニスモバージョンはクルマ好き層からも高い評価を受けた。デビューから10年も経ったとは思えないほど、今見てもデザイン性は秀逸。2020年夏に販売が終了したが、海外ではキープコンセプトの2代目モデルが販売されている。

4)ホンダ・グレイス

 フィットベースの小型セダンで、内外装の質感や実用性、走りや燃費性能など、フィットの美点を受け継ぐことから総合力の高さが魅力。小型セダンとしてはスタイリッシュなフォルムを与えられ、地味ながら細部のデザインには作り手の強いこだわりが見られた。

 中高年ユーザーを中心に小型セダン好きから静かに注目されていたが、日本人のセダン離れに争うことはできず、今年の夏に販売終了。グレイスの消滅により、現行型国産車の5ナンバーボディのセダンはトヨタのプレミオ/アリオンのみとなった。これもかなりの長寿モデルで次期型の話は聞こえてこないことから、国産5ナンバーセダンは絶滅寸前となっている。


マリオ高野 MARIO TAKANO

SUBARU BRZ GT300公式応援団長(2013年~)

愛車
初代インプレッサWRX(新車から28年目)/先代インプレッサG4 1.6i 5速MT(新車から8年目)/新型BRZ Rグレード 6速MT
趣味
茶道(裏千家)、熱帯魚飼育(キャリア40年)、筋トレ(デッドリフトMAX200kg)
好きな有名人
長渕 剛 、清原和博

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