ちょんまげウイングにセイウチノーズと個性的なマシンが多数存在
レーシングカーデザイナーの真のライバルは、レギュレーションといわれている。レギュレーションの裏をかき、グレーゾーンぎりぎりのところまで踏み込んで、いかにほかのチームを出し抜くか。その真剣勝負から、ときに独創的すぎる珍車が生まれてくるのが面白いところ。そんな歴史的な珍車レーシングカーを振り返ってみよう。
1)タイレルP34
まずはメジャーどころから。1976年に登場した6輪のF1マシン。富士スピードウェイで行われた「F1世界選手権イン・ジャパン」でも2位フィニッシュしたこともあり、知名度は抜群。フロントタイヤを小径化し、フロントノーズに隠れるようにし、空気抵抗を減らし、小径タイヤで足りなくなったグリップ力を得るために6輪化するという発想。デザイナーはデレック・ガードナー。しかし、フロントのグリップ不足に悩み、2シーズンで姿を消した。
2)マーチ・711
1971年に開発されたマーチ・エンジニアリング最初のF1マシン。フロントウイングが楕円状の円盤のような形なのが最大の特徴。デザインのモチーフは、イギリスの戦闘機、スピットファイア! 「ティートレイ」と呼ばれるこのウイングを付けたマーチ・711は、優勝こそないが5回の表彰台を記録している。
3)エンサインN179
グランドエフェクトカーの全盛期、1979年に作られたかなり怪異なF1。通常、ボディの両脇にレイアウトされるラジエターを、ボディのセンターに配置! いま見ると、太陽電池パネルのようにも見えるが、ラジエターの熱気がドライバーを直撃するという地獄のようなクルマに……。戦績も残らず、もっとも醜いF1マシンと呼ばれている。
4)マクラーレンMP4/10
1995年のマクラーレンといえば、車体のセンターにウイングを取り付けた、いわゆる「ちょんまげウイング」。ニール・オートレイがチーフデザインを、アンリ・ヂュランが空力を担当したマクラーレン初の本格的ハイノーズのマシンだが、あまりにもかっこ悪い。小型ウイングの走りともいわれている。
5)ティレル025
1997年、ハーベイ・ポスルズウェイトが考案した、「Xウイング」を装着したマシン。空力的には効果的だったが、あまりにもレーシングカーらしくなく、安全性を理由にFIAが禁止。実際はかっこ悪いからNGを出したと思われる。
6)ウイリアムズFW26
2004年に登場したセイウチの牙のような形をしたノーズ、「セイウチノーズ」を装着したマシン。ボディ下面に積極的に空気を流すのが目的だったようだが、効果は薄く、シーズン途中で姿を消した。名門ウイリアムズが傾きだしていったのもちょうどこの時期から……。