スポーツモデルのボディカラーはモータースポーツに由来
スポーツカー、スポーツモデルのボディカラー、イメージカラーに赤や黄色など、派手な色が採用されているのはなぜだろうか。一般的に、乗用車のデザイン、開発時に用いられるボディカラーの多くはシルバーが定番である。クルマのカタチ、陰影が分かりやすいというのがその理由のようだが、スポーツカー、スポーツモデルの発表イベントなどでは、派手なカラーをまとって登場することがほとんどだろう。
赤と言えば、フェラーリ、スポーツカーと言えば赤を想像する人も多いはずだが(実際にそうだ)、もちろん、せっかく高価で高性能なクルマを手に入れたのだから、鮮やかなボディカラーで目立ちたい欲求をかなえてくれる色=派手なボディカラーをユーザーが選びたくなる欲求をかなえるため……と思うのは早合点。
じつはスポーツカー、スポーツモデルのボディカラーは、モータースポーツに由来している。フェラーリやアルファロメオが赤をイメージカラーにしているのは、初期のF1時代にさかのぼる。当時、マシンのボディカラーはコンストラクターの国によって決められていた。
つまり、イタリアはイタリアンレッド、ドイツはジャーマンシルバー、フランスはフレンチブルー、イギリスはブリティッシュグリーンといった、ナショナルカラーというように、である。ちなみに日本は日の丸の赤が映えたアイボリーだったそうだ。そこには、すべてのF1カーが同じボディカラーで競い合ったとすれば、各車を判別しにくいから、という理由もあったことだろう。
今季はちょっと元気のないフェラーリF1ながら、F1創世記から参戦を続けているフェラーリの赤は、その歴史の証、F1の象徴でもある。真紅のボディカラーのフェラーリがいないF1を、誰が想像できるだろうか。ちなみに、市販車のフェラーリの代表的ボディカラー、Rosso Corsaとは、レーシングレッドという意味でもあるのだ。フェラーリのモータースポーツ、F1マシンに思いをはせるフェラーリオーナーとしては、結果的に他色を選んだとしても、Rosso Corsaが候補のひとつに上がっていることは想像にかたくない。
最近では、マツダのこったソウルレッドクリスタルメタリック=シックかつ深みのある赤のボディカラーがSUVなどほとんどの車種のイメージカラーに採用されているのも(MX-30を除く)、マツダの走りへのこだわり、魂動デザインの美しさを最大限に表しているひとつの要素と言っていいかもしれない。
ところが、フェラーリの新車発表会、あるいはショールームに、Rosso Corsaとともに、イエローのフェラーリが登場することも多い。その理由は、フェラーリの本拠地、イタリア・モデナの県章が黄色を基調としているからだ(跳馬のエンブレムも黄色が基調)。地元を大切にする思想、文化は、なるほどヨーロッパならではと言っていい。フェラーリのイエローのひとつがGiallo Modenaであり、モデナの名前が誇らしく含まれている。どころか、フェラーリ公式ストアのコレクションラインのタイトルもまた、「Ferrari GIALLO MODENAコレクション」なのである。
世界のスポーツカー、スポーツモデルが、そんなイタリアに敬意を表しているのは、フェラーリのロッソモデナはもちろん、マセラティのボルドーボンテベッキオ(フィレンツェの橋の名称)、ホンダのミラノレッドといった、赤のボディカラーが用意されていることからも明白だろう。
話を日本のスポーツカーに振ってみると、我が日本が誇るスーパースポーツカー、ホンダNSXのボディカラーはと言えば、世界のサーキットの名前が由来。現在のHPで最初に出てくるボディカラーは鮮やかなイエローのインディイエローパール、「カーブ」を意味するクレバレッド、ホワイトは130Rホワイト、ホワイトパールはモナコの市街地コースで有名なカジノコーナーにちなんだカジノホワイトパールである。NSXのウェブサイトで、そこに登場するNSXのほとんどが、イエローとレッドのボディカラーでキメていることもまた、それがスポーツカーを代表し、象徴するボディカラーであることの証明でもあるはずだ。
もっとも、ヨーロッパでは今、スポーツカーでも比較的地味なシックなボディカラーを選ぶ傾向があるらしいのだが……。