圧雪路ではハンドル操作の手応えが見事
ひとつ気になるのは、新型はシャーベットやスノー路面での性能も強く求めたからだろう、若干ブロック剛性が高いのか、停止間近の極低速走行時のグリップ“感”では先代タイヤの勝ち。勘違いして欲しくないが、グリップ力やコントロール性では新型が優れているのだが、停止直前にクニュとブロックが動くような、先代にあった柔軟な感触がなくなっており、そこだけの安心感を見ると先代の勝ち。
しかし、そのブロックのグニュ感を防ぎ、剛性を確保するからこそ、雪道とシャーベット路面で高い能力を発揮していることを理解すれば満足度高く乗れるはず。そもそも今回の新型の性能確保の作りは、コンパウンドはアイス路面での絶対的なグリップ確保とウエットでの基本グリップ確保に向けて作り、スノーやシャーベットはタイヤ全体とブロック性能を含めた構造で確保している感がある。逆を言えば、アイス路面ではタイヤやブロックを“よらす”ほどの絶対的グリップ力は得られないので、とことんコンパウンドをそこに向けて作り込む必要性から明確に役割分担をした印象。
結果として、ブロックパターンは左右非対称。カーブで積極的に使う外側ブロックは、隣同士のブロックが支え合って倒れ込みを防ぐコンビネーションブロックや、シャーベットやスノーの旋回でのエッジ効果を含めた噛み具合を向上させるジグザク溝形状のバイディングエッジを採用。またブレーキの利きを高める為に、タイヤ中央には縦方向の倒れ込みを防ぐ3連ブロックや、ブレーキ時にブロックが倒れ込んでサイプが閉じてしまい水を吸い上げられなく現象を打破する吸着3Dサイプなど形状の工夫は数知れず。イメージでは、シンプルなブロック形状では倒れ込んでしまうアイス路面向きの柔らかめのコンパウンドを、倒れ込みを防ぎ雪道にザクザクとブロックが刺さりグリップを確保するブロックパターン形状で使いこなして路面適応性まで高めた印象。
ちなみにスノー路面での走りは見事。先代のギズも手応えは十分にあり、安心感のあるフィーリングはあったが、そこに適度な「いなし」が出た感じだ。要はザクザクと路面にささり高いグリップ力を確保しながら、ブロックからツッパリ感が消えてハンドルの切り込み操作などにも対応してくれるようになり、奥深いグリップ力が確保されコントロール性が上がった感触を受ける。
もちろんどんなにグリップ力やコントロール性が良くなっても、冬期路面に対して万全のグリップレベルになったわけでは無いので油断は禁物だが、いまあるスタッドレスタイヤのなかでかなり安心感が高いタイヤであることはハッキリと言える。最後にあのアイスでの噛み具合……個人的な心象としては「鬼クルミ」がある限りトーヨータイヤのスタッドレスにおけるアドバンテージは容易には崩れないとも感じた。
試走タイヤ:
TOYO OBSERVE GIZ2(トーヨー・オブザーブ・ギズツー)
145/80R13〜245/40R18(全23サイズ)