燃費や実用性でライバルに対して負けている
クルマには複数のカテゴリーがあるが、最近は軽自動車に次いでコンパクトカーの人気が高い。トヨタ・ヤリス、ホンダ・フィット、日産ノートは、販売ランキングの上位に入る。今は安全装備や環境性能の向上でクルマの価格が全般的に高まり、購入予算が200万円(車両価格は180万円前後)のクルマを探すと、エンジン排気量が1.2〜1.5リッターのコンパクトカーになる。そこで需要が集中した。
人気の高いコンパクトカーのなかで、意外に販売の伸び悩んでいる車種がスズキ・スイフトだ。2020年度上半期(2020年4〜9月)の登録台数は、1カ月平均にすると約2100台に留まる。ヤリスはSUVのヤリスクロスを除いても、この時期に1カ月平均で約1万2000台を登録した。フィットは約8400台、ノートは約5200台だから、スイフトはライバル車に比べて売れ行きが大人しい。
スイフトの商品力は十分に高い。標準グレードのエンジンはすべて直列4気筒1.2リッターだが(直列3気筒1リッターターボは廃止された)、ノーマルタイプ、マイルドハイブリッド、ストロングハイブリッドを揃える。さらに、1.4リッターターボのスイフトスポーツも用意している。
価格は相応に割安で、1.2リッターノーマルエンジンに各種の安全装備、エアロパーツ、16インチアルミホイールなどを組み合わせたRSが178万6400円だ。比較的シンプルなXGなら154万円に抑えられる。それでも販売が伸びない背景には、複数の理由がある。
まずわかりやすい特徴が少なく、雰囲気も地味なことだ。ライバル車のヤリスは安全装備を進化させ、右左折時の直進車や横断歩道上の歩行者も検知して、緊急自動ブレーキを作動させる。燃費も優れ、ハイブリッドXのWLTCモード燃費は36km/Lと優秀だ。その点でスイフトの衝突被害軽減ブレーキは、ヤリスほど先進的ではない。ストロングハイブリッドのWLTCモード燃費も23km/Lと平凡だ。
フィットは初代モデルから前席の下に燃料タンクを配置して、空間効率を高めてきた。現行型の後席は、足もと空間がLサイズセダン並みに広く、大人4名が快適に乗車できる。荷室も底が深く、積載容量に余裕を持たせた。その点でスイフトの後席は足もと空間が狭めで、荷室もさほど広くない。
ノートはハイブリッドのe-POWERに魅力がある。エンジンは発電機の作動に使われ、駆動はモーターが受け持つので、加減速が滑らかで瞬発力も強い。燃費数値はWLTCモードではなくJC08モードだが、34km/Lと良好だ。後席はフィットと同等に広く、大人4名が快適に乗車できる。これらのライバル車に比べると、スイフトは、低燃費、広い居住空間や荷室といった実用的な特徴が乏しく、売れ行きも伸び悩む。