スズキのラインアップ内での乗り換えが少ないのも要因か
販売が伸びないふたつ目の理由は、スズキが軽自動車中心のメーカーであることだ。今は以前に比べて小型車に力を入れるが、それでも2020年度上半期に国内で販売されたスズキ車のうち、83%を軽自動車が占めた。ダイハツの91%ほどではないが、他メーカーに比べると圧倒的に軽自動車が多い。そうなれば販売力とブランドイメージの両面で、コンパクトカーは不利になる。
しかもスズキには、スイフト以外にも、ソリオ、エスクード、クロスビーなど小型車が多い。とくにソリオは2020年度上半期に1か月平均で約2800台を登録して、スイフトを上まわる。スズキでは小型車の販売比率が低く、その割に車種数は多いため、需要も分散された。
3つ目の理由は、スズキに上級車種が少ないことだ。ヤリスであればプリウスやヴォクシー系3姉妹車、ノートならセレナなどからのダウンサイジング需要を見込めるが、スイフトにはこのようなミドルサイズ以上のクルマがほとんどない。逆に軽自動車からのアップサイジングはねらえるが、今の軽自動車は背の高い車種が売れ筋だから、乗り替える対象はおもにソリオになる。
以上のようにスイフトの売れ行きが伸び悩む理由は、車両本体の商品力というより、スズキ車のラインアップや乗り替えの導線によるところが大きい。
スイフトの雰囲気は地味だが、ボディは軽く、ノーマルエンジンのRSは装備を充実させて900kgだ。運転感覚は軽快で、車両との一体感も味わえる。インパネなど内装の質も高い。欧州のベーシックカーに似た独特の雰囲気を備えるので、コンパクトカーを購入するときは、スイフトも試してみたい。スイフトスポーツも、運転の楽しさと割安な価格(201万7400円/6速MT)を両立させて、クルマ好きの間で人気が高い。