欧州ではコンパクトから高級SUVまでBEV化が進む
クルマの電動化が進んでいる。とくに2020年に一段と厳しいCO2排出量規制が実施される欧州市場では、その対応が喫緊の課題となっていて、ゼロエミッションビークル(ZEV)の市販は待ったなし。すでに多くの欧州系メーカーでは、ZEVの代表格といえるBEV(電気自動車)をローンチしている。そうしたモデルは日本市場にも上陸している。
最近ではアウディe-tronスポーツバックがデビューしたばかりだし、ほかにもジャガーI-PACE、メルセデスベンツEQC、ポルシェ・タイカンなど輸入車のBEVラインアップは豊富になっている。もちろん、BEV専業メーカーであるテスラのモデルも売れている。直近、2020年9月の日本における販売台数は推定でおよそ690台と、販売店が限られたブランドと考えると、十分以上の実績を重ねているのだ。プレミアムブランドのBEVを受け入れるという市場マインドは広がりつつあり、環境問題を置いておいてもそこにはビジネスチャンスがあるのだ。
こうした海外の流れを見ていると、国産のBEVが日産リーフと三菱i-MiEV、そして間もなく市販がスタートするHonda eといったAセグ〜Cセグに集中しているのは世界の潮流とズレているように感じるかもしれないが、そう考えてしまうのは早計であり、ミスリードだ。
アウディ、ジャガー、メルセデスベンツ、ポルシェといったメーカーは、そもそもプレミアムブランドであり、そうしたブランドが高級路線のBEVをリリースするというのは自然な流れだ。むしろポルシェがコンパクトなシティコミューターを出すほうに違和感があるだろう。その意味では、BMWが「BMW i」というサブブランドで「i3」というコンパクトなBEVを出したほうがブランディングからするとイレギュラー対応といえる。
さて、まだまだ高密度で自動車に使えるバッテリーというのは高価で、高級車でしかビジネスとして成立できないという見方もあるかもしれないが、それも間違った認識だ。前述したように欧州でのCO2排出量規制はすべてのメーカーが対象だ。大衆車ブランドだからといって免除されるわけではない。その証拠に、プジョー208や2008、DS3といったBセグメントのモデルにもBEVは登場している。さらにCセグメントでは世界のベンチマークといわれるフォルクスワーゲン・ゴルフにもBEVバージョンは存在しているのだ。
まだ日本には上陸していないが、フォルクスワーゲンは新しいID.シリーズでCセグメントのBEVを生み出しているし、ボルボ初のBEVはXC40ベースに生まれた。さらに、フィアットは新しいFIAT500をBEVとして生まれ変わらせた。けっして高級車しかBEVが成立しないわけではない。