レーシングドライバーが独断と偏見で選出! 「魂」を揺さぶられた歴代国産スポーツTOP5 (2/2ページ)

サーキットのラップタイムを性能の指標とする試みも!

 免許取得してまもなく、モータージャーナリストの仕事を始めてからは実際に運転することでクルマの善し悪しを見抜くことに傾注した。その過程で市販車をサーキットで走らせ性能を比較する機会に恵まれる。ゼロヨン加速や最高速ではなく、カタログ馬力でもない。サーキットのラップタイムを性能の指標とする新しい試みはレース好きの僕には願ってもない企画となった。

3)マツダ・サバンナRX-7
4)トヨタ・セリカLB2000GT

 そしてはじめて筑波サーキットを舞台に国産スポーツモデルの性能比較企画が誕生する。エントリーは当時唯一車名に「GT」を名乗っていた日産スカイライン2000GT。対するのはマツダが世界に衝撃を与えたロータリーエンジンを搭載する本格スポーツモデル「初代サバンナRX-7」と「名ばかりのGTは道を開ける」という挑戦的なキャッチコピーで登場させられた「2代目トヨタ・セリカLB2000GT」だった。

 まずスカイライン2000GTでタイムアタックするとラップタイムは1分21秒台。1分20秒が国産スポーツの壁になると考えられた。次にセリカLB2000GTでアタック。タイムはなんと1分18秒台! スカイラインを圧倒してセリカのキャッチコピーは真実だったことが証明された瞬間だった。そしてRX-7でタイムアタック。そこで引き出されたタイムは1分16秒台。当時これは驚異的な速さといえたのだ。

 タイムアタックを終え、プロドライバー同士で世界初?となるバトル(レース形式の性能比較)を敢行! 5周で速さを争った。僕はセリカ2000GTを担当。スタートダッシュで逃げるRX-7の一人勝ちと思われたが、2周3周と周回数ごとに差は縮まり、最終ラップ前にセリカがトップに躍り出てそのまま世界初バトルを制したのだった。勝因はトヨタ車の安定したブレーキ性能にあった。制動安定性と耐フェード性の高さで、ラップごとにブレーキフェードでタイムを落とすRX-7を攻略することができたのだ。この2台は実際に運転して心と体感に感妙を与えた忘れられないスポーツカーとなった。

5)ホンダ・インテグラTYPE R

 5台目に選んだのは「ホンダ・インテグラ TYPE R」だ。初代DC2型も素晴らしかったが、僕が選びたいのは2代目のDC5型。初代同様DC5型もスポーティで速くパワフル。文句ない性能だったが、感心させられたのは宣伝プロモーション活動だ。ホンダは2台のレース仕様をノーマルに近い状態でスーパー耐久仕様に仕立て、土屋圭市選手をはじめとするプロレーサー6名を雇い入れて2001年の十勝24時間耐久レースにエントリーする。

 そしてはじめての24時間レースで見事クラス1−2フィニッシュを達成。総合でも3、4位に入賞するという快挙を達成したのだった。そのレースには僕もプーマ・ランサーエボVIIで参加していたが17位で完走するのがやっと。耐久性を高めるのが緊急の課題だったが、初登場のインテグラ TYPE Rの高い耐久性を眼の当たりにして三菱自の開発陣にも火がついた出来事だった。この完璧なプロモーションでインテグラ TYPE Rが売れなかったら、日本にはスポーツカーの需要はないとメーカーが判断しても仕方ない。

 それ以降、スポーツカーはパワー競争の時代へと突き進み、心に響くことは少なくなっていく。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

新着情報