ボディは小さくても過激な走りで多くの人を魅了した
東京オートサロンで公開された、トヨタのスポーツモデルを担当するGazoo Racingが初めて自社のみで手掛けた市販車であるGRヤリスのカタログモデルが9月に発売された(筆者も東京オートサロンから6月30日まで先行予約が行われたファーストエディションをオーダーしており、納車間近となっている一人だ)。
GRヤリスはWRC参戦のため、「既存の市販車を改造するのではなく、競技に使う際に有利な市販車を造る」というコンセプトで開発されてモデルで(残念ながら現行レギュレーション最後の年となる、2021年のWRCへのGRヤリスでの参戦は見送られてしまったが)、ラリー以外の競技での活躍も楽しみだ。
GRヤリス以前の日本車の歴代ラリー参戦ベース車はWRX STIを含むスバル・インプレッサと三菱ランサーエボリューションが双璧だが、前回の2リッターターボ+4WDに続きコンパクトカー以下のラリー参戦ベース車を振り返ってみよう。
1)日産マーチR(1988年)&マーチスーパーターボ(1989年)
初代マーチに設定されたRはラリーをはじめとした競技ベース車で、1リッター4気筒エンジンの排気量を競技のレギュレーションで有利なよう若干排気量を小さくし、ターボに低速域を担当するスーパーチャージャーを加え110馬力を絞り出すという強烈なスポーツモデルだった。
マーチRの一般仕様がスーパーターボなのだが、一般仕様のスーパーターボでもエンジンルームがダブル加給によりギュウギュウ詰めのためパワステが付かず、ハンドリングも荒っぽいものだったというが、古き良き時代の楽しいクルマだったと聞く。
2)スバル・ヴィヴィオRX-R系(1992年)
軽自動車の競技ベース車はアルトワークスやミラにもあったが、ここではヴィヴィオRX-R系を紹介する。1992年登場のヴィヴィオは1台1台入魂のクルマづくりをするスバルらしい、お金の掛かったクオリティの高い軽ハッチバックだった。そのなかでスポーツモデルのRX-R系は4気筒スーパーチャージャーを搭載し(FFと4WDを設定)、あのニュルブルクリンクでもテストを行うなど、バカっ速だった。そんなクルマだけにラリー参戦は当然で、なんと過酷かつ走行距離の長いサファリラリーでもクラス優勝を遂げた。
また競技ベース車のRX-RAはエアコンレスなどによる軽量化に加え、専用ECU、専用クロスミッション、強化サスペンション、リアには機械式LSDを装備するなどした非常にスパルタンなモデルだった。なお、ヴィヴィオRX-R系はダート系の競技志向のユーザーを中心に今でも大人気である。
3)ダイハツ・ストーリアX4(1998年)&ブーンX4(2006年)
現在のブーンの前身となる初代ストーリアには競技ベースのX4が設定されており、その内容は競技のレギュレーションで有利なよう軽自動車の4気筒エンジンを713ccに排気量アップし、ハイブーストを掛けた120馬力のエンジンを搭載した4WDと、とにかく過激だった。
その後継車となるのが初代ブーンのX4で、こちらは936ccのターボエンジン(133馬力)+4WDとストーリアX4ほど過激ではなかったが、どちらも愛すべき存在だった。