視認性のしやすさなどは今後の進化に期待
かつて、スウェーデンのサーブが、ブラックメーターというものを採用したことがある。これは、運転者にとって必要最小限の情報のみをメーターに表示する仕組みで、もちろん、燃料計や警告灯など必要に応じて表示することは可能だが、運転中に余計な情報で気が散らないようにと考えた仕組みだ。
現代では、メーターのほかにカーナビゲーションを見るなど情報を確認する表示が多くなっているうえ、スイッチを廃してタッチパネルやコントローラーでの操作になるなど、運転中に注意を払うべきことが昔より多くなっている。そこにサイドミラーの画像までがつねに視界に入ってきたのでは、運転に集中しにくく、逆に不必要なものまで映し出されると、いっそう注意が散漫になって運転操作を誤る恐れもある。
使っているうちに慣れるかもしれない。しかし、慣れ過ぎて無視するようになり、逆に見落としを起こしても意味を失う。
アウディe-tronは、速度無制限区間のあるアウトバーンでの走行も視野に、超高速で運転する際には必要最低限の情報の提供に留めるべきだと考え、ドアの内側にモニターを設置したのではないか。なおかつ、それによって、サイドウインドウから外の様子も視野に入り、クルマの真横の様子をじかに目で確認することもできる。それに対し、ダッシュボード上に画面を設ける方式では、画像だけに意識が集中し、窓の外の現実の景色にまで意識が行きにくいのではないか。
まだ良し悪しを判定する段階ではないだろう。逆に、採用例があることで以上のような課題も見えてくるのである。
鏡の虚像を見るのではなく、画面の画像を見るカメラの場合は、とくに老眼になってくると焦点を合わせにくくなる。あるいは焦点が合うまでに時間が掛かる。したがって、顔の近くにあるルームミラーについても、高齢者になると見づらくなる。後席に人が乗っていたり、荷室に荷物を満載したりした際に、後方の安全確認をするにはよいだろうが、走行中の通常の後方確認には役立ちにくい側面もあるのである。